ニュース速報

ビジネス

アングル:急激な株高に「異常」の声も、米で広がるバブル警戒

2021年01月27日(水)18時15分

 1月25日、米金融市場では世界的な株式バブルへの懸念が高まり、急反落への警戒感から一部の銘柄が乱高下するケースも起きている。写真はニューヨークのマンハッタンにある「チャージング・ブル」の像。2019年1月撮影(2021年 ロイター/Carlo Allegri )

[ロンドン/ニューヨーク 25日 ロイター] - 米金融市場では世界的な株式バブルへの懸念が高まり、急反落への警戒感から一部の銘柄が乱高下するケースも起きている。

世界の株式市場は、当局による大量の資金供給、超低金利、新型コロナウイルスワクチンの配布など好材料が重なって「何でも買う」上昇相場となり、時価総額が昨年3月末の安値から33兆ドルも膨らんだ。

米主要株価指数のS&P総合500種は昨年3月以来70%余り上昇したが、一部赤字企業の株価急騰、株式新規公開(IPO)市場の過熱、素人投資家の間で広がる投資熱などが懸念を呼んでいる。

個人投資家による取引の増加も株価上昇に手を貸した。

TDアメリトレードのチーフ市場ストラテジスト、JJ・キナハン氏は「個人投資家にとっては、取引のときに普通の状態に比べて過度にリスクを取っているなら、それが警戒信号だ。今は普通の動きではない」と述べた。

投資家は好例として、ビデオゲーム販売の米ゲームストップ株の乱高下を挙げる。株価は今年に入って約250%上昇していたが、25日に一時、さらに2倍以上も値上がりし、その後上げ幅を縮小した。トレーダーによると、空売り筋が損切りの買い戻しに走り、それに伴う相場上昇に個人投資家が便乗したという。

サスケハナ・ファイナンシャル・グループのデリバティブ戦略部門共同ヘッド、クリストファー・マーフィー氏は「個人投資家が大きな部分を占めている」と述べた。

インターネット障害分析サイトのダウンディテクター・ドット・コムによると、25日朝方には、チャールズ・シュワブやロビンフッドなど複数の主要個人投資家向け取引プラットフォームのユーザーから障害発生の報告が寄せられた。

個人投資家向け取引システムは過去1年間で取引量が急増し、このところ技術的な障害が相次いで発生している。CBOEグローバル・マーケッツによると、25日の総出来高は約164億株で、月初来平均の約145億株を上回った。

浮かれムードは小型株中心のラッセル2000指数にも表れている。ロイターがリフィニティブのデータを分析したところ、同指数を構成する企業のうち、営業損益が赤字の企業の株価は過去1年間、指数全体を50%ポイント近くアウトパフォームした。

デービッド・コスティン氏が率いるゴールドマン・サックスのアナリストチームはノートで、「市場の一部で最近、バブル的な心理に即した投資家の行動が見られる」と指摘した。

ゴールドマンによると、赤字企業のアウトパフォームは1999-2000年の「ドットコムバブル」期に記録された140%ポイントに比べればはるかに低く、08年の世界金融危機直後に近いという。

ただ、ミラー・タバクのチーフ市場ストラテジスト、マット・マレー氏は「1999-2000年ほどのバブル度合いに達しなくても、株価が大幅に下落することはあり得る」と言う。

バブル銘柄の一例として、投資家は電気自動車(EV)関連株を挙げる。例えば過去52週間にEVメーカーのテスラは株価が8倍になり、EV用充電装置のブリンク・チャージングの株価は2000%も上昇。S&P総合500種は昨年3月末からの上昇率が57%だが、IPO指数は200%も上がっている。

米市場に上場しているカナダのモバイル機器メーカー、ブラックベリーも25日に株価が急騰したが、同社は理由が分からないとしている。

ドイツ銀行は調査ノートで、株式のコールオプション(買う権利)の過去3カ月の平均出来高が過去最高を更新したと説明。増加分の大半は、個人投資家による買いを反映した小口の契約だったことを明らかにした。

時価総額に対するコールオプション出来高の比率が最も高かったのはライブ配信のフボTV、ゲームストップ、ライオット・ブロックチェーンだという。

ドイツ銀の最近の調査では、市場の一部がバブルだとの回答が90%に達し、テスラの株価は今年末までに半値になるとの予想が過半数を占めた。

GMOのマネーマネジャーのジェレミー・グランサム氏もバブルへの懸念を示す1人で、2009年から長期にわたって続く株式の強気相場はついに「壮大なバブル」へと成長したと指摘した。

バウポスト・グループの創設者であるセス・クラーマン氏は最近、市場からリスクが「完全に消滅した」とあきれた。

しかし主要銀のすべてが株式市場はバブルだと見ているわけではない。

シティの株式ストラテジスト、ロバート・バックランド氏は「誰もがバブルについて尋ねるが、最も沸騰している指数でさえ、上昇ぶりは過去のバブル期に遠く及ばない」と述べた。

S&P500種構成銘柄の1年後の業績予想に基づく株価収益率(PER)は22倍で、ドットコムバブル破裂前で最も高かった25倍を下回っている。

シティは債券利回りに対するプレミアムを挙げて、株式市場はまだまだ上昇すると予想する。

米連邦準備理事会(FRB)が金融緩和策を巻き戻す可能性が、市場では脅威だと見られている。しかしバックランド氏は「株式バブルはやわではない。中央銀行から引き締めの最初の兆候が出ただけで破裂することはない」と述べた。

(Thyagaraju Adinarayan記者、Lewis Krauskopf記者、John McCrank記者)

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、ウクライナ和平案の感謝祭前の合意に圧力 欧州は

ビジネス

FRB、近い将来の利下げなお可能 政策「やや引き締

ビジネス

ユーロ圏の成長は予想上回る、金利水準は適切=ECB

ワールド

米「ゴールデンドーム」計画、政府閉鎖などで大幅遅延
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体制で世界の海洋秩序を塗り替えられる?
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    ロシアのウクライナ侵攻、「地球規模の被害」を生ん…
  • 7
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 8
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中