ニュース速報

ビジネス

第3四半期の米GDP33.1%増、コロナ禍反動 影響継続へ

2020年10月30日(金)03時05分

米商務省が29日発表した第3・四半期の実質国内総生産(GDP)速報値(季節調整済み)は年率換算で前期比33.1%増と、政府が統計を開始した1947年以来最大の伸びを記録した。ペンシルベニア州ブラッドフォードで7月撮影(2020年 ロイター/BRENDAN MCDERMID)

[ワシントン 29日 ロイター] - 米商務省が29日発表した第3・四半期の実質国内総生産(GDP)速報値(季節調整済み)は年率換算で前期比33.1%増と、政府が統計を開始した1947年以来最大の伸びを記録した。

政府が導入した3兆ドルを超える景気刺激策が個人消費を押し上げた。ただ、新型コロナウイルス危機が引き起こした景気後退(リセッション)から持ち直すには1年以上かかる可能性がある。市場予想は31.0%増だった。

第2・四半期GDPは31.4%減と、過去最大の落ち込みだった。

米大統領選前に発表される最後の主要指標となったGDPは記録的な伸びとなったが、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)がもたらした人的被害を和らげる効果はほとんどない。依然として数千万人が失業しているほか、死者は22万2000人を超えた。

米大統領選を5日後に控え、大半の全米調査でリードを許しているトランプ大統領は、GDPの大幅持ち直しを景気回復の証しと主張するとみられる。ただ生産高は依然として2019年第4・四半期の水準を下回っている。成長が急速に減速している兆しと合わせて、対抗馬のバイデン前副大統領はほぼ確実にこれらを指摘するとみられる。

トランプ氏は「米国の歴史で最も大きな成長率を達成し、最善の結果となった。こうした結果が11月3日(の大統領選)前に出たのは良かった」とツイッターに投稿。一方、民主党候補のバイデン前副大統領は、経済は完全に回復していないと指摘。「米国は深い穴に落ち込んでいる。トランプ大統領の失策により、第3・四半期の成長率はこの穴から抜け出すのに十分ではない。社会の上層部は回復の恩恵を受けているが、大勢の労働者や中小企業は取り残されている」と述べた。

コーネル大学のクリストファー・ウェイ准教授は、「選挙が実施される年の上半期の経済情勢が選挙に影響を及ぼす」とし、今回のGDP統計で「全く影響は受けない」との見方を示している。

第3・四半期の前年同期比は7.4%増。第2・四半期は9.0%減少していた。生産高は19年第4・四半期の水準を3.5%下回る。第3・四半期の増加を受け、上半期の落ち込みの約3分の2が回復した。米経済は2月に景気後退入りしていた。

政府の支援策が多くの企業や失業者を支援し、これが個人消費の追い風となってGDPを押し上げた。ただそれ以降、支援策に充てる政府支援金は枯渇したほか、新たな支援策の見通しは立たない。また新型コロナ感染が全米で急増しており、レストランやバーなどの事業は制限を余儀なくされている。

個人所得は前期から5406億ドル縮小。政府の新型コロナ支援策に関連する移転支出が減ったことが要因。個人所得は第2・四半期に1兆4500億ドル増えていた。労働市場の回復が鈍化する中、消費の見通しに陰りが出ている。

パンデミック中に喪失した2220万件の雇用のうち回復したのは半分超で、解雇の動きは続いている。

米経済の3分の2以上を占める個人消費は40.7%増と、歴史的なペースで伸びた。自動車や衣料、靴などの売り上げが好調だった。サービスも増えたが、昨年第4・四半期の水準は依然下回っている。

個人消費は、1200ドルの現金給付や失業保険給付の週600ドルの上乗せを含む政府の支援が追い風となった。

消費が増える中で輸入も増加し、貿易赤字が拡大した。ただ一部の輸入品は在庫にまわった。在庫の積み上げは貿易によるGDPへの重しを相殺した。

第2・四半期に落ち込んだ設備投資も持ち直した。ただエコノミストは、新型コロナによる生活の変化に関係ないモノの需要は引き続き弱いため、設備投資の持ち直しが一時的なものであるとみている。パンデミックにより原油価格も急落し、鉱物探査など非住宅構築物への支出も低迷している。

米航空機大手ボーイングが28日に発表した決算は、4四半期連続の赤字となった。21年末までに早期退職優遇制度や解雇、定年退職による自然減を通して、世界中の約13万人の従業員のうち3万人を削減する計画を明らかにした。当初の人員削減計画の倍近くの規模となる。

過去最低水準の金利を追い風に、住宅市場も好調だった。一方、移転支出が第2・四半期だったため、政府支出は第3・四半期GDPの重しとなった。新型コロナの危機により厳しい財政状況となっている州や地方政府のよる支出削減も重しとなった。

ナットウエスト・マーケッツ(コネチカット州)のチーフ米国エコノミスト、ケビン・クミンズ氏は「米国のGDPは2021年第4・四半期まで新型コロナ感染拡大前の水準を回復しない。産出ギャップを埋めるにはさらに時間がかかる」と厳しい見方を示した。

*内容を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

S&P、丸紅を「A─」に格上げ アウトルックは安定

ワールド

中国、米国産大豆を買い付け 米中首脳会談受け

ビジネス

午後3時のドルは155円前半、一時9カ月半ぶり高値

ワールド

被造物は「悲鳴」、ローマ教皇がCOP30で温暖化対
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 9
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 10
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中