ニュース速報

ビジネス

米欧などの大手銀が違法資金移動に関与か、20年近くと報道

2020年09月22日(火)01時56分

 国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)、バズフィードなど複数のメディアは9月20日、複数の国際級の大手銀行が内部で問題性を指摘されながらも20年近くにわたり違法とされる巨額な資金を移動させていたと報じた。写真は米財務省。8月撮影(2020年 ロイター/Andrew Kelly)

[20日 ロイター] - 国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)、バズフィードなど複数のメディアは20日、複数の国際級の大手銀行が内部で問題性を指摘されながらも20年近くにわたり違法とされる巨額な資金を移動させていたと報じた。

報道は、米財務省の金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)に複数の銀行、その他金融機関から届け出られた不審行為報告書(SAR)に基づいている。バズフィードが漏洩(ろうえい)した2100を超えるSARを入手し、ICIJ、その他のメディアにも情報を提供した。

ICIJの報告によると、漏洩したSARには、1999年から2017年の間に行われた2兆ドル超の取引に関する情報が含まれている。それらの取引は、取り扱った銀行のコンプライアンス部門から不審だと指摘されていたという。SARは必ずしも違法行為の証拠にはならない。ICIJは漏洩したSARは氷山の一角にすぎないとしている。

ICIJによると、SARで出てくる銀行は、HSBCホールディングス、スタンダード・チャータード(スタンチャート)、バークレイズ、ドイツ銀行、コメルツ銀行、JPモルガン・チェース、バンク・オブ・ニューヨーク・メロン(BNYメロン)など。

銀行は、不審な資金取引を察知したら60日以内にSARを届け出る必要があるが、ICIJによると、問題ある取引が処理されてから数年も報告されずにいた事例もいくつかある。

SARに出てくる銀行は、英領バージン諸島といったタックス・ヘイブン(租税回避地)に登録した企業の依頼で頻繁に資金を動かした。また最終的な口座名義人の素性も知らず、行員が大規模な取引に関する情報をグーグルで検索していたという。

取引の具体例としては、JPモルガンによるベネズエラ、ウクライナ、マレーシアの個人・企業の贈収賄絡みとみられる資金の処理、HSBCの出資金詐欺絡みの資金の移動、ドイツ銀によるウクライナ資産家関連の資金取引などが挙げられている。

国際金融協会(IIF)のティム・アダムズ最高経営責任者(CEO)は声明で「今回明らかになったことが、政策責任者の必要な改革への取り組みを後押しすることを期待する」と述べた。

HSBCはロイターに宛てた声明で「ICIJが提供した情報はすべて昔のものだ。(2012年時点で)当社は60以上の地域で金融犯罪への対応能力を刷新する数年がかりの取り組みを開始している」と述べた。

スタンチャートはロイター宛ての声明で「当行は金融犯罪に極めて真剣に対応しており、すでに独自のコンプライアンス・プログラムに大規模な投資を行っている」と説明した。

BNYメロンはロイターに対し、特定のSARについてコメントできないとした上で「関連法規制は完全に順守し、当局の重要な事案を支援している」と述べた。

JPモルガンは声明で「当行は反マネーロンダリングの改革で主導的役割を果たしている」と表明した。

ドイツ銀は20日発表した声明で、ICIJが「多くの歴史的問題を報道した」と指摘。「当行は多大な資源を投じて管理を強化しており、責任と義務を果たすことに非常に注力している」と述べた。

FinCENは9月1日にウェブサイトに掲載した声明で、複数のメディアが違法に開示されたSARに基づき報道しようとしていることは認識しているとした上で、SARを無断で開示することは犯罪で、米国の安全保障に影響を与え得ると述べた。

米財務省当局者は、FinCENの声明より踏み込んだコメントを差し控えた。

英政府は声明で「いかなる状況下でも犯罪者が違法行為で利益を得ることがあってはならず、政府として近年、不正資金の取り締まりに向け断固たる措置を講じてきた」とした上で、企業幹部へのチェックを強化するため、会社登記制度の改革に取り組んでいると述べた。

香港金融管理局(HKMA、中銀に相当)は報道について認識しているが、個々のケースにはコメントしないとした。

*内容を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ベライゾン、過去最大の1.5万人削減へ 新CEOの

ビジネス

FRB、慎重な対応必要 利下げ余地限定的=セントル

ビジネス

今年のドル安「懸念せず」、公正価値に整合=米クリー

ワールド

パキスタン、自爆事件にアフガン関与と非難 「タリバ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 5
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 6
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 7
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 10
    「ゴミみたいな感触...」タイタニック博物館で「ある…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中