ニュース速報

ビジネス

焦点:中国ハイテク大手に逆風、米中緊迫で経営環境激変

2020年08月10日(月)07時58分

華為技術(ファーウェイ)と動画投稿アプリ「TikTok」を運営する北京字節跳動科技(バイトダンス)は米国によるハイテク支配に挑戦する中国の代表的な企業だが、今では逆風にさらされている。写真は2019年5月、中国東莞市にあるファーウェイのキャンパスで撮影(2020年 ロイター/Jason Lee)

[上海/北京 27日 ロイター] - 中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)[HWT.UL]が中国南部に建設した新キャンパス(拠点)には、欧州の都市を模したレンガとしっくい造りの建物が立ち並び、創業者である任正非最高経営責任者(CEO)のグローバルな野心をそのまま形にしたようだ。

動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を運営する北京字節跳動科技(バイトダンス)の創業者、張一鳴氏は北京の本社に、米グーグルのエリック・シュミット元CEOの著書「ハウ・グーグル・ワークス」の表紙のポスターなどを飾る。米国の巨大ハイテク企業と競える世界的企業を築く、が長年の口癖だ。

両社は米国によるハイテク支配に挑戦する中国の代表的な企業だが、中国と米国やインド、オーストラリア、英国などとの関係が悪化したため、今では逆風にさらされている。

両社以外にも、ドローンメーカーのDJI、人工知能(AI)の北京昿視科技(メグビー)や商湯科技開発(センスタイム)、科大訊飛(アイフライテック)<002230.SZ>、監視カメラの海康威視数字技術(ハイクビジョン)<002415.SZ>、電子商取引のアリババ・グループなど、世界最先端の技術を持つ中国のハイテク企業が、市場へのアクセスを失いつつある。

中小企業も経営の再考を迫られている。米国とインドで事業を展開している中国のスタートアップ企業の創業者は「初めての経験だ。いろいろ積み重なって、私の起業家精神はしぼんでしまった。ましてや世界に打って出るなど考えられない」と話した。

中国のハイテク企業を巡る環境は、ほんの1年前に比べても激変した。大半の企業は当時、米中通商紛争やファーウェイを巡る安全保障上の懸念の影響をほとんど受けていなかった。

センスタイムとメグビーは米国の投資家から資金提供を受けており、大型の新規株式公開(IPO)を目指していた。バイトダンスの「ティックトック」は世界各地で急成長。アリババはクラウド事業の見通しが明るいと言い立て、DJIはドローン市場で独占的な地位を固めつつあった。

しかし、米国は昨年10月、中国政府による新疆ウイグル自治区のイスラム系ウイグル族への弾圧などを理由に、中国ハイテク企業への新たな制裁措置を導入。再選を目指すトランプ米大統領は中国批判を強め、中国の習近平国家主席は強硬路線を採った。

中国政府は香港国家安全維持法の施行を巡って他の国々との間でも緊張が高まり、インドは国境付近での中国との係争を受け、中国のモバイルアプリ59種を禁止した。

中国のハイテク大手は今や、契約の解消、製品の禁止、投資阻止などに見舞われており、制約は今後さらに増える見通しだ。

米議会はインドに続いてティックトックの禁止を検討しており、バイトダンスは同事業の売却を迫られる恐れがある。ファーウェイは製品が通信機器市場から絞め出され、売上高が年間数十億ドルも落ち込む可能性がある。

米内務省は安全保障上のリスクを理由に、DJI製民生用ドローンの利用を取りやめ、機体の追加購入を停止。DJIはIPO計画を凍結した。

アリババ・グループはインド政府が傘下「UCウェブ」のブラウザーを禁止したことを受けて、UCウェブの人員を削減する。

ウェドブッシュ・セキュリティーズの株式調査部門マネジングディレクター、ダニエル・アイブス氏は、中国ハイテク企業が「かたずをのんで」地政学的な動きを見守っていると指摘した。

ファーウェイ、アリババ、センスタイム、メグビーはいずれもコメントを避けた。バイトダンスと騰訊控股(テンセント)<0700.HK>のコメントは得られていない。

中国外務省は「強力で高い評価を得ている」中国企業に対し、法令を順守して外国投資を行うよう促し、指示しており、他の国が中国企業の法的な権利と利益を守ることを望んでいる、とした。

<ゲーム分野に光>

投資家によると、ゲーム関連など、国家機密との関わりが薄い一部の分野は、今でも中国企業に開かれている。テンセントはインドでアプリの一部が禁止されたが「プレイヤーアンノウンズ・バトルグラウンズ(PUBG)」などのゲームは、禁止対象から外れた。同社は最近、米カリフォルニア州に新たなゲームスタジオを立ち上げており、今後もこうした事業を増やす方針だ。

中国ハイテク企業にとって、今のところ利益の最大の源泉は巨大な国内市場だ。引き続き中国からの投資受け入れを望んでいる国もある。

インターネット関連に特化する北京のヘッジファンド投資家は「グローバルな市場は規模が大きく、東南アジアと欧州は、今でも中国企業を受け入れているはずだ」と話した。 

ただ、香港のマインドワークス・キャピタルのマネジングディレクター、デービッド・チャン氏によると、以前は中国資本の受け入れに前向きだった東南アジアのスタートアップ企業の一部が、消極姿勢に転じている。

中国企業は外国の規制当局に心変わりを促す努力をしているが、中国政府の政策が変わらないため、効果は上がっていない。

バイトダンスは、ティックトックの経営を中国事業から切り離すと表明。米ディズニーの幹部を引き抜いてティックトックのトップに迎えたが、米政府の態度を軟化させることはできなかった。

北京のコンサルティング会社幹部は「企業にできるのは、そこまでだ。PRに全力を尽くし、外国らしい雰囲気を添えてくれる幹部を雇い、あとは地政学上の衝突が、これ以上起きないのを祈り続けるしかない」と語った。

(記者:Brenda Goh、Josh Horwitz、Yingzhi Yang、Kane Wu、David Kirton、Jonathan Weber)

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送-米政府、海上停滞中のイラン産原油売却を容認 

ワールド

米国防総省、パランティアのAIを指揮統制システムに

ビジネス

米ユナイテッド航空 、秋まで運航便5%削減 中東情

ワールド

米、イラン戦争の目標達成に近づく=トランプ氏
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 2
    メーガン妃、親友称賛の投稿が波紋...チャリティーの場でにじんだ「私的発信」
  • 3
    BTSカムバック公演で光化門に26万人、ソウル中心部の交通を遮断 ──「式場に入れない」新婦の訴えに警察が異例対応
  • 4
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 5
    「日本人のほうが民度が低い」を招いてしまった渋谷…
  • 6
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 7
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 8
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 9
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 10
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 4
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 5
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 6
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 9
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 10
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中