ニュース速報

ビジネス

インタビュー:金融政策、ビッグデータ踏まえた判断必要に=渡辺東大教授

2020年07月13日(月)17時48分

 7月13日、東京大学大学院経済学研究科の渡辺努教授は、日銀の金融政策について、伝統的な経済指標のみならず、速報性の高いビッグデータも踏まえた政策判断が必要になるとの見方を示した。写真は4月、都内で撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)

[東京 13日 ロイター] - 東京大学大学院経済学研究科の渡辺努教授は13日、ロイターのインタビューで、日銀の金融政策について、消費者物価指数(CPI)といった伝統的な経済指標のみならず、速報性の高いビッグデータも踏まえた政策判断が必要になるとの見方を示した。

<コロナで伝統的データ使えず>

渡辺氏は、スーパーマーケットのPOSシステムを通じて集計した日次データをもとにする「東大日次物価指数」を開発したことで知られる。渡辺氏は、感染者が急増しているブラジルを例にとりながら、「例えばCPIでは2%をずっと下回っていて、デフレになることの方が心配かもしれないが、何かのビッグデータでブラジルからの輸入品価格が急騰していると検知できれば、それは日本の食材価格が急速に上がる兆しだ」と指摘。「日銀はこのまま緩和を続けるのは危ないと考える可能性もある」と述べた。

渡辺氏は「この先ワクチンが開発・普及するまで2年くらいかかるだろうが、その間は伝統的データでは間に合わない。(伝統的なデータは)GDP(国内総生産)を含めて使い物にならないので、全面的にビッグデータに頼っていくことになるだろう」と話した。

足元では、スーパーで買いだめする動きなどからモノの値段が上がる一方、サービス価格は下落し、両者が「通常ではないくらい対照的な動きをしている」と言及。「モノを見てインフレを心配すればいいのか、サービスを見てデフレを心配すればいいのか、(金融政策の)論点になりうる」と指摘した。

日銀の金融政策運営について「(物価安定目標の)2%のターゲットそのものを変えることは考えていないだろうが、もっといろんなデータをにらみながら判断していくのだろう」と述べた。

<統計は「民営化」を>

政府・日銀の経済統計は、調査対象企業が回答用にデータを加工する手間がかかるなどの問題が指摘されてきた。新型コロナの影響で回答の回収が難しくなるケースもあり、回答率が大幅に低下した1―3月期の法人企業統計は、回答期限を延長した。

渡辺氏は、民間でビッグデータの提供や分析力のある人材が増加していることを踏まえ「統計のサービスを(政府・日銀の)専売特許にせず、ある種の民営化をした方がいいのではないか。そういう時期に来ていると思う」と述べた。民間企業に委ねた場合には、統計の正確性や継続算出の確保が重要な課題になるため「(政府・日銀は)オーバーサイト、モニターの役割に徹していくべきだ」と語った。

(木原麗花、和田崇彦 編集:石田仁志)

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

パナソニックHDが今期中に1万人削減、グループの業

ワールド

インド、パキスタンによる国境全域での攻撃発表 パキ

ビジネス

日経平均は続伸、米英貿易合意や円安を好感 TOPI

ビジネス

日本製鉄、今期純利益は42%減の見通し 市場予想比
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 2
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..最新技術で分かった「驚くべき姿」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 5
    骨は本物かニセモノか?...探検家コロンブスの「遺骨…
  • 6
    中高年になったら2種類の趣味を持っておこう...経営…
  • 7
    教皇選挙(コンクラーベ)で注目...「漁師の指輪」と…
  • 8
    恥ずかしい失敗...「とんでもない服の着方」で外出し…
  • 9
    韓国が「よく分からない国」になった理由...ダイナミ…
  • 10
    あのアメリカで「車を持たない」選択がトレンドに …
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 7
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 8
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 9
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 10
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中