ニュース速報

ビジネス

焦点:金融市場は下期も大荒れの予感、コロナで空前の乱高下

2020年07月02日(木)14時17分

 今年上半期の世界の金融市場がどんな状況だったかを最も適切に表現するなら、乱高下と言うしかないだろう。写真は3月、ニューヨーク証券取引所で撮影(2020年 ロイター/Lucas Jackson)

[ロンドン 29日 ロイター] - 今年上半期の世界の金融市場がどんな状況だったかを最も適切に表現するなら、乱高下と言うしかないだろう。

今の相場水準だけに目を向けても、上半期に何が起きたかは全く見えてこない。確かにMSCI世界株指数は年初来の下落率が9%近くと過去10年間で最悪の値動きとなった半面、米ナスダック総合は過去最高値圏で推移するなど明らかな強気材料も混在する。そうした明るい面からは、事態の深刻さは到底うかがえない。

だが実際、この半年間の市場は、かつて目にしたことがない乱気流に翻弄された。MSCI世界株指数<.MIWD00000PUS>は2月20日から3月23日までに35%も急落し、大恐慌以降で最も激しい売りを浴びた後、2月に記録した最高値まで10%圏内まで値を戻した。

こうした急速な戻りは全て、世界中で打ち出された財政・金融による政策支援のおかげだった。主要国の大半では政策金利がゼロかマイナスになり、大規模な債券買い入れが行われている。そのため米国の高格付け企業の借り入れコストは、企業破綻が増加しているにもかかわらず、1月の水準より低い。

原油価格の振れ幅はもっとめまぐるしい。北海ブレントは年初来では40%近く下落しているが、第2・四半期では80%反発し、湾岸戦争への懸念が高まった1990年以降で最も堅調な地合いが生み出された。

SEBインベストメント・マネジメントのグローバル資産配分責任者ハンス・ピーターソン氏は、この半年間ほど予測不能な市場は経験がないと振り返るとともに「当初の(資産価格)下落が非常に急速だったので、多くの市場参加者のポートフォリオにゆがみが生じ、リバランスが必要になったのだと思う」と述べ、そこに各国政府や中銀の「常軌を逸した支援」が加わって相場の反発が起きたとの見方を示した。

個別銘柄の「勝ち組」と「負け組」を分析していくと、新型コロナウイルス感染のパンデミック(大流行)を巡るストーリーも見えてくる。

年初来の上昇率が一番高いのは、ビデオ会議運営のズームだ。新型コロナワクチンを開発中のバイオテクノロジー企業モデルナも上昇率が200%を超えた。巣ごもりの恩恵を受けたネットフリックスとアマゾンの上昇率は36%と45%に達した。

逆にクルーズ船運航のカーニバルやロイヤル・カリビアンはそれぞれ69%と66%の下落となったほか、航空各社の株価も低迷した。ただ99%と最も下げがきつかったのは、会計操作疑惑をきっかけに経営破綻したドイツの決済サービス会社ワイヤーカードだった。

世界で一番安全とされる米国債と、これよりずっとリスクが高い新興国債がともに2桁のリターンを記録したのは、米連邦準備理事会(FRB)が事実上のゼロ金利政策を復活させ、世界的な金融緩和の流れを呼び込んだことが影響している。

その結果ドルはユーロなどの主要通貨に対する上昇分を全てはき出した。一方、FRBが社債買い入れに動いたおかげで、第1・四半期に5%値下がりした世界の社債の価格は第2・四半期に8%上昇した。

新型コロナの流行が今まさにピークを迎えつつある幾つかの新興国では、株価がなお大きな打撃を被り続けている。例えば昨年世界一のパフォーマンスだったロシア株はドル建ての下落率が23%となり、ブラジル、コロンビア、メキシコ、南アフリカ、インドネシアの株も軒並み年初来の下げ幅が大きい。

3月単月でさえ、新興国市場からは過去最大となる800億ドルを超える資金が流出した。

ところがその後は、資金が再び戻り始めている。エクアドル債は、債権者が債務減免に合意して以来75%も価格が跳ね上がり、アンゴラ債も50%強上昇した。

アバディーン・スタンダード・インベストメンツの新興国市場スペシャリスト、ケビン・デーリー氏は、第2・四半期の新興国市場は3月の売りからかなり持ち直したと指摘。市場が今や新型コロナ問題を織り込みつつあり、向こう半年で何らの回復があるならば新興国資産が高利回り債とともに非常に好調な動きになると考えるようになっているという。

それでもクレディ・スイスのグローバル最高投資責任者マイケル・ストロベック氏は、これほど相場が急反発した事実と、11月の米大統領選の行方などを含めた先行きの多大な不確実性を踏まえ、市場は下半期もまた乱高下に直面すると警鐘を鳴らす。

同氏は「われわれはこの先の相場の急変動に備えてシートベルトを締めている。投資家も覚悟した方がよい」と話した。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米韓合意の文書いまだ発表されず、潜水艦問題で難航か

ワールド

NY市長選、マムダニ氏当選でユダヤ系有権者に亀裂 

ワールド

豪11月の消費者信頼感指数、3年9カ月ぶりに100

ワールド

今年のノーベル物理学賞受賞者、HPEなどと量子スー
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一撃」は、キケの一言から生まれた
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    インスタントラーメンが脳に悪影響? 米研究が示す「…
  • 7
    中年男性と若い女性が「スタバの限定カップ」を取り…
  • 8
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 9
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 10
    「爆発の瞬間、炎の中に消えた」...UPS機墜落映像が…
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中