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米国債の流動性が薄氷の改善、FRB頼みの状況続く

2020年04月08日(水)10時05分

[ニューヨーク/ボストン 7日 ロイター] - 新型コロナウイルス感染拡大を背景とする金融市場の混乱で米国債市場の流動性は数週間前に著しく低下したが、米連邦準備理事会(FRB)による買い入れなどの緊急措置が奏功し、流動性を測る指標の一部はほぼ通常の水準に戻った。ただ、予断を許さない投資環境は続いている。

FRBは新型コロナに対応した一連の緊急措置を通じて過去3週間で1兆ドル以上の米国債を買い入れた。アナリストらは、FRBの介入がなければ流動性が枯渇し、ボラティリティが再び高まると懸念している。

TDセキュリティーズの上級金利ストラテジスト、ジェナディ・ゴールドバーグ氏は「市場は依然として、FRBが今後どれだけ買い入れるか、それが今すぐなのか数週間かけてになるのかに非常に敏感になっている」と指摘。

「FRBが買い入れ規模を大幅に縮小したうえで介入した場合、市場は再び極めて不安定になるだろう。足元の改善は薄氷の上にあるような格好だ」と述べた。

<流動性プレミアムに注目>

投資家が注目する流動性の主要な指標は、米国債の発行残高の大半を占めるが、日々の取引高は少めのオフザラン(既発債)銘柄に対するオンザラン(新発債)の流動性プレミアム(流動性の低さに起因する金利の上乗せ幅)。アナリストらによると、同プレミアムはFRBが米国債買い入れを開始して以来、低下している。

市場が緊張状態にある場合、オンザラン銘柄は通常、オフザラン銘柄に対して流動性プレミアムが付く。バークレイズは前月の調査ノートで、数週間前の市場混乱の際に、期間30年の新発債の利回りが既発債に比べて5ベーシスポイント(bp)のプレミアムが付いていたと指摘している。これほどまでプレミアムが高まることは過去にあまりなかった。

流動性の改善は、一部の米国債の買い気配と売り気配のスプレッドからも見て取れる。リフィニティブのデータによると、指標10年債の同スプレッドは3月20日に200bpまで広がったが、次の週に6bp以下に縮まった。

7日時点で同スプレッドは3bp以下と、新型コロナ危機前の水準に戻っている。アナリストらは、これは市場の参加者が増えたからで、ディーラーが円滑にリスクヘッジなどの取引ができるようになったと分析した。

それでもなお、米国債市場は全ての年限において売買注文の減少という問題に直面しているとアナリストらは指摘する。

FHNフィナンシャルの金利担当シニアストラテジスト、ジム・ボーゲル氏によると、機関投資家は、新発の投資適格級社債など、より魅力的な投資対象に目を向けているため、米国債の取引高は数週間前のピークから40%減少しているという。

JPモルガンの最新の調査ノートによると、市場に適度な流動性がある場合に売買代金に占める割合が概して大きい高速取引(HFT)も、足元では、過去の平均に比べて低調となっている。

JPモルガンは「現在のように金利の変動率が高いときは、HFTの活動が申し合わせたように低下する傾向にあり、現在もそのような状況だ」とした。

ロイター
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