ニュース速報

ビジネス

ボルカー元FRB議長死去、92歳 インフレ抑制で功績

2019年12月10日(火)09時05分

 米FRB議長を1979年から8年間務め、積極的な利上げで高インフレを抑え込んだことで知られるポール・ボルカー氏(写真)が9日、死去した。92歳だった。同氏の娘が明らかにした。ニューヨークで2005年9月撮影(2019年 ロイター/Chip East)

[9日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)の議長を1979年から1987まで8年間務め、積極的な利上げで高インフレを抑え込んだことで知られるポール・ボルカー氏が9日、死去した。92歳だった。ボルカー氏の娘、ジャニス・ジーマ氏が明らかにした。

ボルカー氏は財務次官やニューヨーク連銀総裁などを経て、カーター政権下でFRB議長に就任した。2008年の金融危機後にはオバマ前大統領によって米経済の立て直しを担う経済再生諮問会議の議長に任命され、金融機関の高リスク投資を制限する「ボルカー・ルール」を提案した。トランプ大統領は2017年の就任後、同ルールの見直しを進めてきた。

トランプ氏が2018年にFRBの利上げは「常軌を逸している」と繰り返し批判したのを受け、ボルカー氏はパウエル現FRB議長に政府からの批判は無視していいと助言していた。パウエル氏は声明で、ボルカー氏の死去に「深く悲しんで」おり、ボルカー氏は「長く語り継がれる功績」を残したと称賛した。

ボルカー氏はFRB議長就任後間もない1979年10月に、米経済を苦しめていた高インフレに対応し、公定歩合を過去最高の12%に引き上げた。これを受けて最優遇貸出金利であるプライムレートは81年5月までに過去最高の20.5%に達した。失業率は2桁台に上昇し、景気は低迷。ただ、その後の80━83年の期間にインフレ率は約15%から3%未満に沈静化した。

インフレ封じ込めのための引き締め政策は議員らの反発を招いただけでなく、農家や建設業者などが大規模なデモを実施して抗議した。

ボルカー氏は後年、これほどまで大胆な引き締め策を実施したのは間違いだったと認めており、87年に行われたロイターのインタビューで、やり直しできるならば「異なる方策を取っていただろう」と回顧している。

金融引き締めはカーター氏がレーガン元大統領に敗れた1980年の米大統領選に影響を及ぼした可能性もある。ただ、カーター氏は「FRB議長としてのボルカー氏の政策は一部で政治的代償を伴ったが、正しい行動だった」とコメントした。

ボルカー氏は2018年に出した回顧録「健全な金融、良き政府を求めて」で、連邦政府の方向性と政府への尊敬が失われた現状に懸念を示した。同年10月にはニューヨーク・タイムズ紙に対し、莫大な富を得た多くの富裕層が、自身の聡明さによって富がもたらされたとうぬぼれ、政府や税金を軽視していると批判。「現在の中心的な問題は金権政治が生まれつつあるということだ」と警鐘を鳴らした。

*内容を追加して再送します。

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア・ガスプロム、26年の中核利益は7%増の38

ワールド

英、農業相続税の非課税枠引き上げ 業界反発受け修正

ワールド

メキシコCPI、12月前半は+3.72%に鈍化 年

ビジネス

金現物、4500ドル初めて突破 銀・プラチナも最高
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 10
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中