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VIX先物売り持ち膨張、投資家はオプションなどでヘッジも万全

2019年12月06日(金)13時15分

 12月5日、米国株式市場において投資家の不安心理の度合いを示すボラティリティーー指数(VIX)は、先物の売り持ち規模が足元で大きく膨らんでいる。写真はニューヨークで11月撮影(2019年 ロイター/Brendan McDermid)

[ニューヨーク 5日 ロイター] - 米国株式市場において投資家の不安心理の度合いを示すボラティリティーー指数(VIX)<.VIX>は、先物の売り持ち規模が足元で大きく膨らんでいる。 

2017年も同様に売り持ちが急拡大し、株価の長期的な安定でVIX先物のショートポジションを構築する上場投資信託(ETF)に資金が殺到。18年初めに投資家の予想外のタイミングでボラティリティーが高騰すると、多額の損失が発生する幕切れを迎えた。

ところが今回は、市場がそれほど脆弱ではないかもしれない。投資家はS&P総合500種のオプションや、VIX関連の上場投資商品(ETP)で守りを固めているからだ。

グレンミード・インベストメント・マネジメントのデリバティブ担当ポートフォリオマネジャー、ステーシー・ギルバート氏は「市場は自己満足に陥っていない。過去1カ月で投資家がより守勢になった様子が見て取れる」と話した。

今週に入って米中貿易協議を巡る好材料と悪材料が交互に流れ、株価が振り回される展開が続いている点を踏まえると、投資家の動きは時宜を得ている。

オプションデータ分析会社トレード・アラートによると、S&P500オプションの取組残高は、プット(売る権利)のコール(買う権利)に対する比率の1カ月移動平均が2.2と以前の相場下落局面よりもはるかに高水準だ。比率が高いほど、株安時にヘッジに利用するプットの需要が強いことを意味する。

VIX先物の売り持ち規模に基づけば、投資家の警戒感は薄いのかもしれない。だが17年にはVIX先物をショートにするETFに資金が流れ込んだものの、今回はボラティリティー上昇で利益を得るETPが資金流入先になっている。

バークレイズ(ニューヨーク)で米株式戦略とグローバル株式デリバティブ戦略を統括するマニーシュ・デシュパンデ氏は、VIX先物をロングにするファンドの資産が増えるのに伴って、ファンド組成者はVIX先物を積み上げる必要に迫られると指摘。高利回り商品が枯渇する中で一定のインカムを確保しようとしている投機筋が、VIX先物の売り手になっているとの見方を示した。

VIX先物ロング型ETPとしては最大級の「ザ・ベロシティーシェアーズ・デイリー2xVIX短期ETNの資産は8月上旬に過去最高の14億2000万ドルに達し、現在もそれに近い水準にある。Yチャートのデータを見ると、3日時点で資産額は10億9000万ドルだ。

デシュパンデ氏は「ロングボラティリティー投資家が主導的役割を果たしている」と述べた。

VIX自体も、今後の株価が最近数週間よりもずっと不安定化するとの観測を反映しているおり、足元で14を超えた。対照的にS&P500の1カ月物ヒストリカル・ボラティリティー(過去1カ月の変動率の指標)はリフィニティブによると7.3にとどまった。

グレンミードのギルバート氏は、両者の差は数年来の最高水準の部類に入ると説明した。

ロイター
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