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焦点:株安に耐えたドル/円、アノマリーや「実弾」が支え
11月2日、世界的な株安が進行するなかで、ドル/円の底堅さが際立っている。従来のようにリスク回避の円高があまり進まないのは、ドルが強いこともあるが、年末にかけて円安が進みやすいといったアノマリー(季節性)が意識されているからだ。2017年撮影(2018年 ロイター/Thomas White)
基太村真司
[東京 2日 ロイター] - 世界的な株安が進行するなかで、ドル/円
国内機関投資家の為替ヘッジ外しや、日本企業による海外企業の買収資金など「実弾」も、円安圧力となっている。
<2つの円安アノマリー>
市場で2つのアノマリーが注目を集めている。
1つは10─12月の円安傾向。安倍政権が発足した2012年から17年まで、ドル/円は6年連続で12月末のレートが9月末を上回った。その平均上昇率は7.3%。今年9月末の113.71円に当てはめると、122円まで上昇することになる。
世界的な金融危機で円が急騰した08年までさかのぼっても、同期間のドル/円は7勝3敗でドルが上昇している。平均上昇率は2.6%。同様に当てはめると年末水準は116円になる。
年末にかけてドル/円が強含みやすいのはなぜか。三菱UFJ銀行・チーフアナリストの内田稔氏は「越年を意識した需給引き締まりにより、ドルが底堅さを増す傾向は(毎年)共通している。今年も10月に入り、年末をまたぐ(ドル調達需要の強さを示す)ベーシススプレッドは拡大したままだ」と指摘する。
もう1つのアノマリーは、米中間選挙年の経験則だ。ドル/円は選挙直前に安値をつけ、年末にかけて反転上昇する傾向がある。
みずほ総合研究所・市場調査部主任エコノミストの殿岡直樹氏によると、71年以降11回の平均では、中間選挙年のドル/円は年初から10月中旬まで6.5%下落、その後12月初旬にかけて2.4%反発するという。
今年10月の安値は、26日の111.38円。この法則では114円へ上昇することになる。
<M&Aとヘッジ外し>
国内勢の継続的な円売りも、円高を抑制している。
1つはM&Aの資金フロー。日本企業の海外企業買収が過去最大規模に膨らみ、外貨調達の円売り/外貨買いが活発に行われている。[nL4N1U72YA]
財務省によると、今年1─8月の対外直接投資は累計で11兆3446億円。年間で過去最大を記録した昨年同期間の12兆8319億円とほぼ同じペースで推移している。
最近でも、三菱UFJ信託銀行が豪コモンウェルス銀行
生保など国内大手機関投資家の動きも、話題になっている。外債購入の際に為替変動リスクを手当てしたヘッジ付き外債から、為替ヘッジを外すための円売りが出ているという。
足元のドルヘッジコストは、3カ月物の年率換算で3%前後。10年米国債利回り
保有外債の為替ヘッジを外すだけなら、金利収入を得ながらコストの削減が可能だ。上期に1000億円分のヘッジ外債をオープン外債へ振り替えた朝日生命保険は「ヘッジコストが上昇しているし、円高がどんどん進む局面でもない」(資産運用企画部長の鶴岡尚氏)として、下期も650億円程度の切り換えを行う予定だ。
<「リスクオフの円高」試されるのはこれから>
ただ、10月はドル高が進んだために、対ドルでは円高がさほど進まなかっただけの可能性もある。
堅調な米景気と上昇する米金利を背景に、ドル指数<.DXY>は10月に9月末比で2.0%上昇、1年4カ月ぶり高値圏に達した。米中貿易戦争への懸念が深刻化する中、市場では「最終的には相対的にでも、勝者となるであろう米国のドルを求める参加者が多い」(信託銀行)という。
クロス円では、ブラジルレアルやトルコリラなどを除いたほとんどの通貨で、10月に円高が進行した。実は、株安の度合いに比べて小さかっただけで、対ドルでも0.6%とわずかながら円高が進行している。
米金利上昇による株安圧力の高まりや、世界景気や企業収益の減速懸念、イタリア財政問題、英の欧州連合(EU)離脱の行方、サウジアラビアやトルコといった新興国の政治懸念など、年末にかけてもリスクは山積み。
10月は世界同時株安が進行したものの、新興国通貨やコモディティなどの下落は限定的だった。「10月のマーケットはリスクオフではなかった」(国内銀行)との見方もある。「リスクオフ時の円高」傾向は本当になくなったのか、試されるのはこれからだ。
*写真を更新しました。
(編集:伊賀大記)