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焦点:安倍首相、増税対策で政策総動員 ポイント還元含め反動減抑え込み

2018年10月15日(月)18時14分

 10月15日、安倍晋三首相は臨時閣議で、2019年10月の消費税率引き上げに向けた対策検討を指示した。写真は2日撮影(2018年 ロイター/Issei Kato)

[東京 15日 ロイター] - 安倍晋三首相は15日の臨時閣議で、2019年10月の消費税率引き上げに向けた対策検討を指示した。あらゆる施策を総動員すると強調し、前回引き上げ時のような景気落ち込みの回避を最優先に掲げた。ポイント還元という新機軸も対策に盛り込まれ、先進国に比べ立ち遅れているキャッシュレス化への意欲もみえる。景気変動の平準化は果たしてできるのか、この1年間が安倍内閣にとって大きな山場となりそうだ。

菅義偉官房長官によると、安倍首相は臨時閣議で「あらゆる施策を総動員し、経済に影響を及ぼさないよう全力で対応する」と述べた。

安倍首相ら政府首脳の念頭にあるのは、2014年4月に消費税率を5%から8%に引き上げた際、駆け込み需要とその後の反動減の振れが大きかったことだ。5.5兆円の経済対策をまとめたが、予想を上回る反動減が景気を冷やした。

菅官房長官は15日の会見で、当時の経験について聞かれ「消費税上げ後の反動減が長く続いた」と述べた。

首相周辺のリフレ政策を支援する学識経験者の多くは、14年4月の増税がなければ、アベノミクスは軌道に乗り、デフレ脱却宣言をすることができたとの見方で一致している。

今回は「前車の轍を踏まない」という堅い決意が、安倍首相にあるとみられる。前回はなかった食料品への軽減税率の適用やポイント還元という新しい試みも、消費の落ち込みを少しでも和らげようという「意思」の表れとみられる。

また、経産省内では、2020年の東京五輪開催時までにG7(主要7カ国)で最低水準のキャッシュレス化を推し進めたいとの声が大きかった。今回のポイント還元は、増税時の対策を推進しつつ、キャッシュレス化を推し進める狙いもあるとみられる。

ただ、軽減税率の対象となる食料品が、さらに2%のポイント還元の対象になるのかとの質問に菅官房長官は「しっかり検討して今後、詰める」と述べ、具体的な制度設計に向けた議論は、今後の課題として残っている。

この日の臨時閣議では、追加歳出9356億円の2018年度第1次補正予算案を決定した。西日本豪雨や相次ぐ台風など自然災害への対応が歳出の柱で、冷房設置や倒壊の恐れのあるブロック塀対策など公立学校の安全対策も盛り込んだ。

今回は、災害復旧・学校安全対策に向けた1次補正予算に加えて、国土強じん化を柱とする2次補正予算も年末までに編成し、切れ目ない財政出動で災害復旧と景気対策に備える。

政策総動員によって、消費増税で生じる「穴」を少しでも小さくしようという意図がうかがわれる。

ただ、米中貿易摩擦やその他の対外的な要因で、円高が進んだ場合、今回の対策でカバーしきれない事態も予想され、安倍政権は国内の消費増税、海外の経済的リスクという「両にらみ」の対応を強いられることになりそうだ。

(ポリシー取材チーム 編集:田巻一彦)

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