ニュース速報

ビジネス

インタビュー:中長期的な財政見通しが重要=古澤IMF副専務理事

2018年10月11日(木)20時19分

 10月11日、国際通貨基金(IMF)の古澤満宏副専務理事は、世界経済の不確実性に対応するため「できるだけバッファーを高める必要がある」との認識を示した。写真は横浜市内で昨年5月撮影(2018年 ロイター/Issei Kato)

[ヌサドゥア(インドネシア) 11日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)の古澤満宏副専務理事は11日、ロイターとのインタビューに応じ、世界経済の不確実性に対応するため「できるだけバッファーを高める必要がある」との認識を示した。その上で2019年10月の消費税率引き上げに触れ、「来年の増税は実施し、中長期的な財政見通しをきちんと示すことが重要」と語った。

主なやり取りは以下の通り。

――新興国の一部で通貨の下落や資本流出が発生している。アジアでも同様の現象が広がるリスクはないか

「今の段階でCONTAGION(伝染)とはみていない。国によって資金フローや為替に影響が出ていることに対しては、それぞれの国がいろいろな対応をしている。すべての国が同じように影響を受けるわけではない。基本的には、その国のファンダメンタルズを強化するための措置をとる必要がある」

――最近の市場変動の背景をどうみるか

「世界中にお金が十分あるので、それがボラティリティーを高めているところはある。また現在の貿易をめぐる議論等、いろいろな要因がマーケットに影響を与え、マーケットの動きを大きくしている部分はある」

――アジア経済への影響はどうか

「まったく影響ないことはないだろうが、日々の動きに一喜一憂するのではなく、実体経済への影響をよく見ていく必要がある」

――中国の資本流出について懸念が広がっているが、今後、アジア経済におけるリスクとして高まる可能性はあるか

「中国当局は、おそらく色々な手立てを持っているので、(資本流出が)世界経済全体を揺るがす(危機の)引き金になるとは思わない。マネージできるだろう」

――IMFは今の日銀の金融緩和政策の維持を支持する一方で、副作用にも言及している。金融緩和の効果・副作用のバランスについてどうみるか

「やはり金融緩和策が長期戦になっているので、持続的でないといけない。そこは色々な政策の調整を経て、そういう状況になっている。7月の政策見直しも、金融機関への影響にも配慮し、金融政策の持続性を高める、という意味で評価できる」

――日銀の金融緩和が限界に近づいているとの声もある

「限界に近づいていることはない」

――すでに金融緩和も長期化し、財政もこれだけ拡大している。将来景気が落ち込んだ場合、日本の政策余力はどれだけあるのか

「金融政策はもう目一杯いろいろやっている。一方で、できるだけバッファーを高めていかないと何かあったとき対応ができない。そういう意味で財政については予定されている来年の消費増税は実施し、中長期的な財政の見通しをきちんと示すことが重要」

――将来の緩和余地を広げるため、日銀もなるべく早く金融政策を正常化すべきとの声もあるが

「まだそういう段階ではない。今の金融政策を変更し、金利を上げたり緩和の度合いを変更するような状況ではない」

(木原麗花)

ロイター
Copyright (C) 2018 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ドローン大量投入に活路、ロシアの攻勢に耐

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 7
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中