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米輸入物価、7月は横ばい ドル高が抑制要因に

2018年08月15日(水)01時51分

[ワシントン 14日 ロイター] - 米労働省が14日発表した7月の輸入物価指数は前月から横ばいだった。燃油が値上がりする一方、その他の項目は値下がりした。市場予想は0.1%上昇だった。ドル高が物価上昇圧力を抑制していることが示された。

6月の輸入物価は当初発表の0.4%下落から0.1%下落へ上方改定された。

7月の前年同月比は4.8%上昇と、2012年2月以来の大幅な伸びとなった。6月は4.7%上昇していた。

ムーディーズ・アナリティクスのシニアエコノミスト、ライアン・スウィート氏は「米国はもはやディスインフレを輸入していない」と指摘。同時に「最近のドル高による非燃料の輸入価格への影響は遅れて表れることから、輸入物価の伸びは当面限定的となるだろう」と述べた。

前月比の内訳は、燃油・潤滑油が1.6%上昇。6月は1.3%上昇していた。食品は1.8%下落。6月は2.6%下落していた。

燃油と食品を除くコア輸入物価は0.1%下落した。6月は0.2%下落していた。7月の前年同月比は1.6%上昇。前月比が下落した背景には、ドルが7月に米国の主要な貿易相手国の通貨に対して0.5%上昇したことがあるとみられる。

ドルは今年に入り、貿易加重ベースで4%超上昇している。米国と主要経済国の間に貿易摩擦が生じていることにより一部の輸入品の値上がりが予想されていたが、ドル高が物価の抑制要因となり得る。

トランプ政権は、国内企業が海外の不当な競争にさらされていると主張し、鉄鋼とアルミニウムに輸入関税を課した。欧州連合(EU)や中国、メキシコ、カナダなどの主要な貿易相手国は同等の報復措置を取った。そのほか、米国はカナダ産針葉樹材や中国の広範な消費財にも関税を課している。

MUFGの首席エコノミスト、クリス・ラプキー氏は「貿易戦争は依然として初期段階で、輸入製品価格の上昇に伴う物価上昇はいまだ本格化していない可能性がある」と警鐘を鳴らした。

7月は、石油を除く産業用資材・原料が1.0%下落し、16年1月以来の大幅な落ち込みとなった。6月は0.2%上昇していた。資本財は2カ月連続で0.1%下落した。自動車は横ばい。自動車を除く消費財は0.3%上昇し、6月の0.3%下落からプラスへ転じた。

中国からのモノの物価は0.2%下落し、17年9月以来の落ち込みとなった。6月は0.1%上昇していた。7月の前年同月比は0.2%上昇だった。

同時に発表された7月の輸出物価は0.5%下落と、17年5月以来の大幅な落ち込みとなった。6月は0.2%上昇していた。7月の内訳は、農産物が5.3%下落と、11年10月以来の大幅なマイナスだった。大豆が14.1%下落したことが押し下げ要因だった。

中国が米国産大豆に報復関税を課したことで、輸出物価がここ数カ月間下落している。7月はトウモロコシや小麦、果物、ナッツも値下がりした。

輸出物価の前年同月比は4.3%上昇。6月は5.3%上昇した。農産物は2.0%下落と、1年ぶりにマイナスとなった。

RDQエコノミクスの首席エコノミスト、ジョン・ライディング氏は「貿易摩擦に端を発する関税の農産物への影響が表れつつある」と指摘した。

*内容を追加して再送します。

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