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焦点:トルコリラ建て債、含み損抱える外国人に売り気配なし
8月8日、トルコのリラ建て国債を保有する外国人投資家は、今年に入ってのリラ急落で保有する国債の価値の3分の1が消えてなくなった。しかしデータを見ると、本格的な売りは起きていない。写真は通貨リラ紙幣。イスタンブールで昨年10月撮影(2018年 ロイター/Murad Sezer/Illustration)
[ロンドン 8日 ロイター] - トルコのリラ建て国債を保有する外国人投資家は、今年に入ってのリラ急落で保有する国債の価値の3分の1が消えてなくなった。しかしデータを見ると、本格的な売りは起きていない。それは「慣性」が働いているか、あるいは流動性の欠如が反映されているのではないだろうか。
帳簿上では、外国人にとって今年のリラ建て国債市場は悲惨そのものだ。リラ
ここ数週間で損失はさらに膨らんでいる。物価上昇率が14年ぶりの高い伸びで推移しているのに、金利を低く抑え続けているエルドアン大統領の姿勢が市場に嫌われたためだ。大統領選後に権限を飛躍的に強化したエルドアン氏が、経験豊富で政策に精通していた経済閣僚を更迭して娘婿を財務相に起用したことも、一部の投資家を不安に陥れた。
中央銀行が何回か緊急利上げに動き、国債の名目利回りは新興国の中で最も高いグループになったとはいえ、実質利回りは2%にすぎない。JPモルガンが算出するGBI現地通貨建て新興国債指数によると、トルコ国債のパフォーマンスはアルゼンチンに次いで低調となっている。
それでも外国人投資家の資金は、多くの市場関係者が想定したよりもトルコにとどまる姿勢が強いことが判明しつつある。そこで大きな問題となるのは、トルコを巡る危機が解決しなかった場合、果たしてある時点で外国人が見切りをつけて国債の含み損を実現するかどうかだ。資金流出が相当な規模になれば、同国の資金繰りは一層苦しさが増しかねない。
モルガン・スタンレーのストラテジスト、ミン・ダイ氏は「(今のところ)予想されていた外国人によるトルコ国債売却は発生していない」と述べた。
国際金融協会(IIF)のデータに基づくと、7月27日までの2週間ではリラ建て国債から資金が流出しているが、前年と比べるとなお7500万ドルの買い越し基調を維持している。
中銀の統計でも外国人の国債保有比率は7月末時点で20%弱と、2月終盤の22%からそれほど変わっておらず、本格的な売りが出ていないことが裏付けられる。
ミン氏は顧客向けノートで、外国人が売りに動かない理由はいくつかあると説明し、その1つとして流動性が大きく低下して1日のボラティリティーが50─70ベーシスポイント(bp)になっている事態を挙げた。また直近のGBI現地通貨建て新興国債指数の構成見直しでトルコ債のウエートが下がらず、投資家は実際に売却しなくてもアンダーウエートの状態を確保できた面もあったとみている。
最近の大幅な価格下落が外国人をつなぎ止める新たな要素になったかもしれない、とみるのはGAMの投資ディレクターのポール・マクナマラ氏。これまでの含み損に対して、ある種のサンクコスト効果(元を取らないともったいないという気持ち)が働いているという。
中銀の利上げが予想より大幅だったことを受け、6月初めにリラ建て債の投資を拡大したアバディーン・スタンダード・インベストメンツのような例も見られる。
ただしいつまでも外国人がリラ建て資産を保有し続けているとは限らない。
トルコにとって外国人はおよそ200億ドルの国債を持っているだけでなく、330億ドル前後の株式にも投資しているので、拡大を続ける経常赤字のかなりの部分を穴埋めしてくれる存在と言える。
ブルーベイ・アセット・マネジメントのストラテジスト、ティム・アッシュ氏は、もしこれらの外国人資金の引き揚げが始めれば、トルコの対外資金不足額はずっと大きくなると警鐘を鳴らす。
一方モルガン・スタンレーのミン氏は投資家に対して、他の投資家がいつまでリラ建て資産を持ち続けるかを見極めるのではなく、あくまでファンダメンタルズに基づいて判断するよう忠告し、リラ建て債については弱気になるべき根拠が存在すると主張した。
ソシエテ・ジェネラルのストラテジスト、フェニックス・カレン氏も、物価上振れと政策金利据え置きという組み合わせはこの先投資を続けるには厳しい環境だと述べ、実質利回りがゼロに向かうならトルコへ投資する意味がなくなると付け加えた。
(Karin Strohecker記者)