ニュース速報

ビジネス

旭化成、自動車内装材大手の米セージを約791億円で買収

2018年07月19日(木)19時08分

[東京 19日 ロイター] - 旭化成<3407.T>は19日、米自動車シート材大手セージ・オートモーティブ・インテリアズ(サウスカロライナ州)を約7億ドル(約791億円)で買収すると発表した。成長が見込まれる自動車内装市場での競争力を高め、自動車分野向け事業の拡大を狙う。

セージの純有利子負債を加えた買収額は10億6000万ドル。

自動車のコネクテッド(インターネットに常時つながる)化、電動化、シェアリング化、自動運転化が急速に進む中、車室空間にも新たなニーズが生まれる。シェアリングでは快適性、電動化では静粛性、自動運転で車内を居間のように使うようになれば座席の工夫や室内のデザイン性などがより求められる。

セージは車内装材に用いる繊維製品の開発・製造・販売を手掛け、顧客は完成車メーカーと直接取引する部品メーカーのため、素材メーカーの旭化成よりも完成車メーカーとの距離が近い。旭化成は完成車・自動車部品メーカーとの距離を縮め、車室空間でのニーズを迅速かつ的確に把握したい考えだ。

旭化成の小堀秀毅社長は都内で会見し、完成車メーカーとの強いパイプを持つセージを傘下に入れることで「『川上』から『川中』へサプライチェーンを拡大する」と説明。「車内空間は今後5年、10年かけて変化が起きてくる」、「変化を待つのではなく、変化を提案していく」と述べた。両社でカーシートの中にセンサーを組み込むなどの提案やセージのデザイン力などを生かした提案をしていきたいという。

セージはシートファブリック市場で世界一のシェアを持ち、旭化成もセージに人工皮革を納入するなどすでに取引関係にある。セージは欧米の高級車メーカーに強く、米国、イタリア、ポーランド、ブラジル、中国などに生産拠点を構えており、旭化成はその世界的な生産・販売網も活用できる。

旭化成はケミカル・繊維などを主力事業としつつ、自動車事業も重点分野として強化。電動車に使うリチウムイオン電池の材料であるセパレータ、高機能複合材、センサーなどを手掛ける。自動車分野向け売上高は2025年度に15年度比で3倍となる約3000億円を計画する。

15年にはセパレータ大手の米ポリポア(ノースカロライナ州)を約2600億円で買収しているが、小堀社長は「買収はこれで打ち止めということではない」とし、「セージとの連携の中で次のアンテナを張っていきたい」と語った。

*内容を追加します。

(白木真紀)

ロイター
Copyright (C) 2018 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EUと米、今週末に貿易協定の枠組みで合意の可能性=

ワールド

米・イスラエル首脳、ガザ停戦交渉断念を示唆 ハマス

ワールド

ロシア中銀、2%ポイントの利下げ決定 22年5月以

ビジネス

ECB、着実な政策対応必要 成長見通し改善も=独連
MAGAZINE
特集:山に挑む
特集:山に挑む
2025年7月29日号(7/23発売)

野外のロッククライミングから屋内のボルダリングまで、心と身体に健康をもたらすクライミングが世界的に大ブーム

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 2
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心中」してしまうのか
  • 3
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安すぎる景色」が話題に、SNSでは「可能性を感じる」との声も
  • 4
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 5
    レタスの葉に「密集した無数の球体」が...「いつもの…
  • 6
    機密だらけ...イラン攻撃で注目、米軍「B-2ステルス…
  • 7
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 8
    アメリカで牛肉価格が12%高騰――供給不足に加え、輸入…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「電力消費量」が多い国はどこ?
  • 10
    羽田空港に日本初上陸! アメックス「センチュリオン…
  • 1
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人口学者...経済への影響は「制裁よりも深刻」
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    「マシンに甘えた筋肉は使えない」...背中の筋肉細胞の遺伝子に火を点ける「プルアップ」とは何か?
  • 4
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 5
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 6
    「カロリーを減らせば痩せる」は間違いだった...減量…
  • 7
    父の急死後、「日本最年少」の上場企業社長に...サン…
  • 8
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失…
  • 9
    約558億円で「過去の自分」を取り戻す...テイラー・…
  • 10
    日本では「戦争が終わって80年」...来日して35年目の…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 6
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 7
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 10
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中