ニュース速報

ビジネス

アングル:ジャンク債で選別色強まる、より安全な債券に妙味

2018年05月19日(土)12時56分

 5月11日、米共有オフィス運営大手のウィワークは先月、7億0200万ドルのジャンク債を発行したが、投資家の引き合いが弱かったため、最終的に利回りを約1%ポイント引き上げて、7.875%にせざるを得なくなった。写真は同社ロゴ。4月上海で撮影(2018年 ロイター)

[ニューヨーク 11日 ロイター] - 米共有オフィス運営大手のウィワークは先月、7億0200万ドルのジャンク債を発行したが、投資家の引き合いが弱かったため、最終的に利回りを約1%ポイント引き上げて、7.875%にせざるを得なくなった。

近年のジャンク債発行市場で滅多に目にすることがなかったこうした現象が、ここにきていくつか発生しており、高利回りを追求して何でも手を出してきた買い手の姿勢に変化が生じていることが分かる。

実際過去2カ月間で、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)で「BB」ないしそれ以下、ムーディーズでは「Ba」とそれ以下の格付けの債券について、投資家は表面利率が低かったり、発行体への制限条項(コベナンツ)が緩い案件への参加を拒絶している。無理にジャンク債を買わなくても、米10年債利回りが4年余りぶりに3%を超えるなど、より安全な債券の妙味が増してきたからだ。

石油業界向けを中心に建設・エンジニアリング事業を手掛ける米マクダーモット・インターナショナルや、グリーティングカード大手アメリカン・グリーティングスなども、起債において利回りを上げたり、コベナンツをより厳しくするといった対応を余儀なくされた。

オッペンハイマー・ファンズ(運用額2430億ドル)のクリシュナ・メナミ最高投資責任者は「われわれはすべての案件であらゆるコベナンツに目を配り、熱心に交渉している」と語り、自身を含む投資家に不利な条件は拒絶する姿勢を鮮明に打ち出している。

債券投資家は、このままジャンク債を強気に買い続けることへの不安から、選別的になっている面もある。

イートン・バンス(運用額4340億ドル)の債券分散化ディレクター、キャスリーン・ガフニー氏は「ジャンク債発行市場にいくつかの亀裂があり、それがやみくもに買うなと投資家にシグナルを送っている」と述べた上で、今は市場環境悪化の際にジャンク債がアンダーパフォームするリスクが適切に織り込まれていないので、もっと利回りを上げてくれないと買いたくないと付け加えた。

<コベナンツの質改善>

ムーディーズのコベナンツ質指数(CQI)を算出するエバン・フリードマン氏によると、現段階ではまだ過去と比べてコベナンツが脆弱であるのは間違いない。また全般的に投資家がジャンク債購入の見返りに受け取るプレミアムは、景気後退後の最低水準に近い。

例えばICEバンク・オブ・アメリカ/メリルリンチ高利回り債指数を見ると、4月のジャンク債と米国債の利回りスプレッドは3.24%ポイントと、07年7月以降の最低水準をわずかに0.01%ポイント上回る程度だった。

ただその後スプレッドは3.43%ポイントまで拡大しているほか、ムーディーズのCQIは4月まで4カ月連続で改善している。

昨年には、発行体が資産売却で得た資金を債務返済もしくは事業投資に振り向けることを義務付ける条項を免除する形の起債を、2社が初めて実施した。ところが独立系信用調査会社コベナント・レビューのアナリスト、ロス・ハロック氏によると、今年3社が同様の試みをしたものの、いずれも失敗したという。

(Kate Duguid記者)

ロイター
Copyright (C) 2018 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ホワイトハウス、WTOを資金削減リストから除外

ビジネス

EXCLUSIVE-BYD、25年販売目標を16%

ワールド

トランプ氏、4日にハイテク企業CEOと夕食会 改装

ビジネス

英経済は軟着陸近い、金融政策を慎重に調整へ=テイラ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 5
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 6
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「農産物の輸出額」が多い「…
  • 8
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 9
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中