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インタビュー:日銀新体制、物価目標の柔軟化が不可欠=門間元理事

2018年02月22日(木)10時52分

 2月22日、元日銀理事でみずほ総合研究所・エグゼクティブエコノミストの門間一夫氏はロイターとのインタビューに応じ、黒田東彦総裁の続投を軸とした日銀の新体制では、実体経済や金融システムなど物価以外の要素も考慮したバランスのとれた金融政策運営を行うことが重要になるとの認識を示した。写真は16日、衆院予算委員会に出席する同日銀総裁。16日に国会で撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 22日 ロイター] - 元日銀理事でみずほ総合研究所・エグゼクティブエコノミストの門間一夫氏はロイターとのインタビューに応じ、黒田東彦総裁の続投を軸とした日銀の新体制では、実体経済や金融システムなど物価以外の要素も考慮したバランスのとれた金融政策運営を行うことが重要になるとの認識を示した。そのためには日銀が目指す物価2%の達成時期の修正など、目標の柔軟化が不可欠と語った。インタビューは21日に実施した。

門間氏は、政府が16日に国会に提示した黒田氏の再任と2人の副総裁に若田部昌澄・早稲田大学教授、雨宮正佳・日銀理事を充てる人事案について「総裁続投でもあり、基本的に今の政策から大きな変化はないだろう。2%物価目標達成を目指して、粘り強く緩和を続ける姿勢に変化はない」との見方を示した。

これまでの黒田体制の5年間について、就任当初に物価2%達成に向けた強い決意とともに打ち出した量的・質的金融緩和(QQE)は「2%を目指すとの日銀の宣言をてこに日本経済を変える、というメッセージを政府・日銀一体となって強く打ち出した。そのことに歴史的な意義がある」とし、日本経済が「もはやデフレではない状況」に至った中で「その歴史的意義は達成された」と評価した。

こうした認識をもとに「異次元緩和の役割は終わった」と述べ、新体制の今後5年間は「これだけ景気が良くなっているのに、2%インフレの実現が難しいことをどう考えるのかについての議論が重要だ」と強調。「ゼロインフレが根強く染みついている日本の特性を踏まえ、政策をどのように切り替えるかという議論が必要になる」と語った。

さらに「世の中には実体経済、金融システム、市場機能、財政規律など中央銀行が考えないといけない要素が複数存在する」と指摘。

現在のように「物価2%目標を非常に重要視して圧倒的な順位に置いてしまうと、副作用を虚心坦懐(きょしんたんかい)にみることはできない」と懸念した。

バランスのとれた金融政策運営には「物価目標柔軟化が必要」と述べ、具体的には「できるだけ早期に」としている達成時期を変更して「中長期的な目標に切り替えるべき。そういう議論が可能になるかどうかが、今後5年間の課題だ」と語った。

物価目標柔軟化に向けた政府と日銀との「共同声明」の見直しについては「政府とも認識を共有しなければならず、ハードルが高い」とし、「理想は目標を柔軟化したうえで共同声明も変えることだが、それが難しければ日銀単独で柔軟に運営という可能性もある」との認識を示した。

(木原麗花 編集:伊藤純夫)

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