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ロイター企業調査:9割が不祥事による「日本ブランド」不信懸念
12月8日、ロイター企業調査で、大企業による相次ぐ品質不正問題の影響について「日本製品への不信感」につながることを懸念しているとの回答が約9割を占めた。写真は11月10日、都内で製品検査データの改ざんについての記者会見で頭を下げる神戸製鋼の川崎博也会長兼社長ら(2017年 ロイター/Toru Hanai)
[東京 8日 ロイター] - 12月ロイター企業調査で、大企業による相次ぐ品質不正問題の影響について「日本製品への不信感」につながることを懸念しているとの回答が約9割を占めた。「あまり懸念していない」は10%にとどまる。
コスト削減至上主義など、日本企業にまん延する風土自体が背景にあり、時代遅れとの指摘が目立つ。ただ、過度な品質基準や検査方法の形骸化も背景にあるとみられている。今回の問題を受け、44%の企業が品質管理強化策を実施、ないし検討中と回答した。
ベトナムで大筋合意した「TPP(環太平洋連携協定)11」については、55%が「期待する」と回答。海外諸国に比べ出遅れていた東南アジアでの日本企業の事業展開がスピードアップするチャンスとなるとして、子会社間貿易の関税撤廃や貿易ルール一元化に期待する声がある。
この調査は、資本金10億円以上の中堅・大企業400社を対象に11月21日─12月4日に実施。回答社数は240社程度。
<不正問題、背景に過剰なコスト削減 半数が対応策>
調査によると、不正問題が日本製品のブランドイメージに悪影響を及ぼすことを「ある程度」懸念している企業は61%、「大いに」懸念している企業が28%を占めた。合計89%が日本企業全体に影響する問題だととらえている。
「企業が利益を追求し過ぎ、そうせざるを得ない環境になっている」(食品)、「現場を見ずに、過剰なコスト削減追求が招いた結果」(サービス)といった指摘があり、日本企業の体質が根本にあるとの見方が示されている。「多少コンプライアンスから逸脱しても、会社の目先の利益になるよう行動することが企業社会では評価される風土があると思うが、今はそのような時代ではない」(電機)として、時代のすう勢に敏感になるべきとの指摘も複数あった。
この結果、「日本人の真面目な国民性によって得られてきた国際的な信頼が揺らぐ」(金属)、「中国など他国のずさんな点を指摘する資格はもうなくなった」(サービス)などと、海外からの信頼に影響しかねないと危惧する向きもいる。
一方で、不正自体がそれほど重大な過失ではないとの認識もある。「日本製品の品質水準は国際的にも十分高レベル。形式的な検査基準の虚偽報告について騒ぐのではなく、実質的なリスクがあるかで判断すべき」(卸売)、「そもそも規格が妥当なのか。過剰とも言える安全規格になっていないか」(不動産)など、疑問の声が上がっている。
一連の不祥事を受け、顧客との契約内容の順守徹底など管理強化策を実施済みの企業が19%、今後実施を検討中の企業は25%、合計44%が対策を実行、ないしは予定している。
既に実施済みの企業からは「共有価値観として、悪いニュースを真っ先に報告することをマインドセットする」(輸送用機器)、「顧客との契約内容について対話しながら確認し、見直しを実施する」(紙・パルプ)などの具体策が寄せられた。
さらに今回の不正の結果、「神戸製鋼所<5406.T>関連会社製品で、無通告の企画はずれがあり、文書による謝罪と対策を求めている。しかし代替品が国内に無く、現実的に製造・検査可能な範囲を『協定仕様』とする方向」(卸売)という解決策を迫られた事例もあった。
他方で何も対策予定のない企業が55%にのぼる。自社にとっては特に重大な問題ではないと認識している企業もありそうだ。
<TPP11、アジア展開スピードアップ>
ベトナム会合で大筋合意した「TPP(環太平洋連携協定)11」への期待を聞いたところ、「かなり期待している」と「ある程度期待している」との回答が合わせて55%にのぼった。「日本企業の海外事業はリスクを意識し過ぎて慎重。欧米・中韓企業にスピードで遅れているが、挽回するチャンスになる」(電機)との見方がある。「東南アジア子会社間の関税撤廃に期待」(繊維)する声や、「東南アジア地域との貿易ルールの確立に意義がある」(食品)などの評価もある。
ただ、「米国が含まれおらず、効果は期待できない」(多数)といった声も多い。
日本が推進すべき貿易協定で最も優先度が高いのは「TPP11」との回答が最も多く、37%を占めた。「3年後の米大統領選挙後には米国が二国間主義から多国間主義に戻る可能性があり、その時までにこの枠組みを維持・強化しておくべき」(電機)、「まず米国抜きの11カ国で協定を確固たるものとし、それをベースに米国を引き込むのが良策」(建設)などの理由が挙げられた。
二国間貿易協定を支持するとの回答は25%。「各国の経済環境、規模が違う中での一律な協定は無理があるかもしれない」(小売り)といった見方が示されている。
(中川泉 編集:山川薫)