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米経済3年ぶりの低成長、第1四半期GDP速報値0.7%

2017年04月29日(土)02時59分

 4月28日、第1・四半期の米GDP速報値は3年ぶりの弱い伸びにとどまった。写真はニューヨークの量販店で2010年7月撮影(2015年 ロイター/Shannon Stapleton)

[ワシントン 28日 ロイター] - 米商務省が28日発表した2017年第1・四半期の国内総生産(GDP)の速報値は、年率換算で前期比0.7%増と、14年の第1・四半期以来3年ぶりの弱い伸びにとどまった。市場予想の1.2%増にも届かなかった。昨年第4・四半期のGDPは2.1%増だった。

トランプ米大統領が掲げる景気刺激策が頓挫する可能性が懸念される中、第1・四半期は個人消費がほとんど伸びず、企業の在庫投資が減少した。

ただ、第1・四半期のGDPの緩慢な伸びは、実際の経済の底堅さを反映していない可能性がある。労働市場は最大雇用に近い状態にあり、賃金上昇は力強さを増している。消費者信頼感指数も数年ぶりに近い高水準にある。こうしたことを踏まえると、天候要因に影響された個人消費の急減速は恐らく一時的な現象にとどまるとみられる。

また、GDPの算出方法には問題があり、第1・四半期は数字が弱く出がちだ。政府もこうした問題を認めており、改善に努めている。

ハイ・フリークエンシー・エコノミクスのチーフ米国エコノミスト、ジム・オサリバン氏は「伸びは弱いが、第1・四半期のGDPはここ数年、平均を下回る傾向が続いている。早合点してはいけない」と述べる。「第2・四半期は再び加速するだろう」と付け加えた。

トランプ大統領はインフラ支出と減税、規制緩和で経済の加速を図ろうとしている。しかし経済成長率を年率で4%に押し上げるとするトランプ大統領の公約は、季節的・一時的な抑制要因がなかったとしても、生産性が上がらない限り、達成が難しいというのがエコノミストらの見方だ。

政府は26日、法人税率を35%から15%に引き下げることなど税制改正案の概要を発表したが、改正の詳細は示さなかった。

BMOキャピタル・マーケッツのシニアエコノミスト、サル・グアティエリ氏は、今回のGDP統計は3%を超える成長率達成を目指すトランプ政権にとり痛手となるとの見方を示し、「就任100日目までにこうした統計が出るのは望ましくなかった」としている。

第1・四半期の個人消費は0.3%増と、09年第4・四半期以来の低水準にとどまった。暖冬の影響で光熱費が減ったことが響いた。米経済の3分の2を占める個人消費は、昨年第4・四半期には3.5%増と底堅く伸びていた。

個人消費支出(PCE)物価指数は前期比2・4%上昇と、11年の第2・四半期以来の伸びとなり、これも個人消費の抑制要因になったとみられる。政府が不正対策の一環で税還付を遅らせたことも消費を控える要因になった可能性がある。ただ、貯蓄が8142億ドルと昨年第4・四半期の7789億ドルから増えており、今後の個人消費は加速が見込まれる。

米労働省が28日発表した第1・四半期の雇用コスト指数(ECI)統計では、民間部門の賃金・給与が前期比0.9%上昇し、過去10年間で最大の伸びとなった。昨年第4・四半期は0.5%の上昇だった。

GDP統計によると、第1・四半期の企業の在庫投資は103億ドルと、昨年第4・四半期の496億ドルと比べて減った。GDPに対する在庫の寄与度はマイナス0.93ポイント。昨年第4・四半期はプラスの1.0ポイントだった。

政府支出は1.7%減。国防費が4.0%減と14年第4・四半期以来の大きな減少となったことが響いた。国防費の減少は2期連続だった。州・地方政府による投資も減った。

一方、企業投資はさらに改善し、機器の設備投資は9.1%増加した。原油が数年来の安値から持ち直し、ガス・石油の掘削事業が増えた。石油探索や立坑・油井への投資が449%増と過去最高の伸び率となった。16年第4・四半期は23.7%の伸びだった。こうした投資が追い風となり、住宅以外のインフラ投資は22.1%増と昨年第4・四半期の1.9%減から大幅プラスへと転じた。

住宅投資は2期連続で伸びた。輸出が輸入の伸びを上回り、貿易赤字はやや減った。

*内容を追加して再送します。

ロイター
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