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福島原発事故費、倍増21.5兆円 東電「債務超過でない」と経産相

2016年12月09日(金)18時02分

 12月9日、経済産業省は、東京電力福島第1原発事故に伴う廃炉、賠償などの費用の総額が21.5兆円に上るとの試算を公表した。これまでの見積もり額11兆円から倍増となり、従来2兆円との想定だった廃炉費用は8兆円と4倍も増額となった。写真は福島第1原発で2月撮影(2016年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 9日 ロイター] - 経済産業省は9日、東京電力福島第1原発事故に伴う廃炉、賠償などの費用の総額が21.5兆円に上るとの試算を公表した。これまでの見積もり額11兆円から倍増となり、従来2兆円との想定だった廃炉費用は8兆円と4倍も増額となった。

東電の純資産(約2兆2700億円)を大幅に上回る金額だが、世耕弘成経産相は同日の記者会見で「(東電が)債務超過というわけではない」との認識を示した。

<原発、送配電も再編、統合目指す>

21.5兆円の試算金額は、同日開かれた「東京電力改革・IF問題委員会」の6回目会合で提示された。同委員会(非公開)では、東京電力ホールディングス<9501.T>の広瀬直己社長が今後の東電改革案として、廃炉事業、原発事業、送配電事業でそれぞれ再編・統合を目指すとの説明があった。

同委員会の小林喜光委員(三菱ケミカルホールディングス<4188.T>会長、元東電社外取締役)は会議終了後、原発、送配電に関する東電の説明について、「共同事業体を作るという方向だ」と記者団に述べ、東電が他電力と原発や送配電で資本面を含めた統合を目指す意向であることを示唆した。

東電は、年内に取りまとめを行う東電改革委の議論の中間報告を踏まえ、2014年1月に政府に認定された再建計画(総合特別事業計画)を改定。再編方針を打ち出す見通しだ。

<8兆円、機械的に算出>

21.5兆円の内訳は廃炉が8兆円(従来想定2兆円)、賠償が7.9兆円(同5.4兆円)、除染が4兆円(同2.5兆円)、中間貯蔵施設整備が1.6兆円(同1.1兆円)にそれぞれ膨らむとしている。賠償や除染に充てる目的で、東電に貸し付ける資金確保のために用意している交付国債枠は現在の9兆円から13.5兆円に拡大する。

世耕経産相は21.5兆円の費用について、「当面は費用が上振れすることはないと考える」と述べる一方で、増加、低減いずれの可能性もあると言及した。

改革委が示した骨子案では、賠償費、廃炉費とも30年程度で回収する。原子力損害賠償・廃炉等支援機構を通じて政府が東電の過半数の議決権を持つ国有化は当分は継続し、2019年に国の関与する状況について評価するとしている。

8兆円の廃炉費は、廃炉のために東電が確保するとしている2兆円に加え、原発事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出し作業にかかる費用6兆円を加えたもの。原賠支援機構が有識者に試算を依頼。1979年に起きた米スリーマイル島原発事故の事例を基に算出した。

世耕経産相は、8兆円の試算について「必要資金として算定しており(東電は)債務超過ではない」と記者会見で述べた。

経産省資源エネルギー庁電力・ガス事業部の村瀬佳史部長は、8兆円について「過去の事例に一定の仮定を置いた上で機械的に算出した」と説明。そのうえで東電が同費用について一括で費用計上する必要性について「そうした認識には至らない」と述べた。

東電の広瀬社長は、今年10月の東電改革委の初回会合後、記者団に廃炉費用を一括計上した場合の債務超過リスクについて言及していた。

<賠償費、一部は新電力も負担>

経産省は同日、21.5兆円の事故費用をだれが負担するかについても案を示した。東電は15.9兆円(従来は7.2兆円)を負担。廃炉費は、国が関連する研究開発費を支援することはあるが、東電が自力で捻出するとの原則は維持したうえで、新たに作る積立金制度で資金をプールする方向だ。

一方、賠償費は、東電と原発を持つ大手電力が負担する方式から、原発を持たない新電力の利用者を含めた全需要家に負担させるとした。賠償制度が不備な中で福島事故が起きたとして、「積み立て不足を全需要家から公平に回収する」というのが経産省の言い分だ。

東電改革委が示した新電力の負担額は2400億円で、今後、新電力が大手電力の支払う送配電使用料(託送料)に上乗せされる見通し。しかし、制度の不備を理由に過去に遡って新たな費用負担を求めるという理屈には批判も強い。

原発に批判的な超党派の議員連盟「原発ゼロの会」(共同代表=河野太郎・自民党行政改革推進本部長、近藤昭一・民進党副代表)は7日、福島第1の廃炉・賠償費用問題に関連した談話を発表。賠償費を託送料で回収することについて、「国と電力会社が安全神話を流布させてきた責任の棚上げで認められない」などと批判を強めている。

<除染費用の捻出も困難な先行き>

除染費用については、従来から原賠機構が保有する東電株の売却益で賄う方針だ。会計検査院は昨年3月の報告書で、2.5兆円(従来の除染費見通し)を株式売却益で賄うには、機構保有の東電の種類株がすべて普通株に転換した場合、平均売却価格が1050円になることが必要と指摘した。

新たに示された除染費見通しは従来比1.6倍。検査院が指摘した平均売却価格は1680円に増える計算で、これは東電普通株の株価(9日終値521円)を3.2倍の水準に相当する。

世耕氏は「売却は10年程度先のはなし。海外の電力事業を考えると成長の伸び代はある。他事業者との連携でコストダウンも見込まれるので、企業価値を高めていくことは可能だ」などと述べた。

*内容を追加しました。

(浜田健太郎)

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