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インタビュー:脱国有化を視野、自由化は他地域・ガスに注力=東電社長

2016年02月08日(月)07時25分

 2月8日、東京電力の広瀬直己社長は、実質国有化から脱却するための経営評価が2016年度末に控えていることについて、「楽観していないが、絶望的でもない」などと述べた。本社で5日撮影(2016年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 8日 ロイター] - 東京電力<9501.T>の広瀬直己社長は、ロイターなどのインタビューで、実質国有化から脱却するための経営評価が2016年度末に控えていることについて、「楽観していないが、絶望的でもない。結果を出していく」と述べ、来年度は民営復帰に道筋をつける1年との認識を示した。

4月から家庭向け電力市場が自由化されることへの対応については、関東以外での顧客獲得や、来年4月に自由化される家庭向けガス市場への拡大などで埋め合わせるとしている。

<原油50ドルなら赤字>

東電が1月29日に発表した15年4─12月期決算は単体の燃料費が前年同期に比べ7361億円減少、連結経常利益は同92.1%増の4362億円となり、第3・四半期では過去最高だった。

急速な原油安の進行に伴い、原油・液化天然ガス(LNG)など燃料費低減が先行し、3─5カ月遅れて電気料金を値下げする制度上のプラス効果が2540億円あった。原油価格が上昇に転じれば収支にはマイナスに働く。

広瀬社長は、長期停止が続く柏崎刈羽原発の再稼働がなくても黒字を継続できるかについて「難しい」と強調。「今は運が良い」としつつ、「(原油が1バレル当たり)50ドルに上がれば赤字が出る」と語り、再稼働がない状態のままでは好業績は持続できないとの考えを改めて示した。

<社債発行はマーケットの判断>

2年前に政府に認定された再建計画では、16年度に「自律的運営体制」に入ったと評価されれば、原子力損害賠償・廃炉等支援機構の議決権比率が50%未満となり、実質国有化から脱却できる。カギは社債市場への復帰だ。

ただ、公募社債の発行再開について広瀬社長は「マーケットの判断」とし、原発再稼働が社債発行の条件になるかどうかについては「再稼働しないと発行できないのか、再稼働したら絶対発行できるのか簡単ではない」と述べた。

電力小売り全面自由化では、他電力やガス会社、石油元売り、異業種からの参入組との競争が始まる。東電が長年独占し、今後、主戦場となる首都圏の家庭向け電気市場で、攻められる側の同社が収益を伸ばすのは困難だ。

埋め合わせとして広瀬社長は「一つは関東の外に出ていくこと。来年4月からは(家庭向け)ガスに攻め込むことができる。海外発電事業も伸ばす」などと語った。

*インタビューは5日に行われました。

(インタビュアー:月森修、記事作成:浜田健太郎)

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