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来年度物価、せいぜい1%=富士通総研・早川氏

2016年01月13日(水)17時50分

 1月13日、元日銀理事の早川英男・富士通総研エグゼクティブ・フェローは、13日の講演でアベノミクスについて論評し、「円安・株高をもたらし点ではマル、物価上昇では三角、経済成長率はバツ」と指摘した。写真は都内で2014年5月撮影(2016年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 13日 ロイター] - 元日銀理事の早川英男・富士通総研エグゼクティブ・フェローは13日、都内で2016年の日本経済見通しについて講演し、16年度の消費者物価指数は「せいぜい1%」との見通しを示した。原油価格が足元のバレル30ドルから反転上昇することがなければさらに下振れるとし「幸か不幸か2%は達成しない」と言い切った。

16年度は世界経済の成長率が高まらず、15年度に日本企業の業績を支えた円安・原油安効果が剥落、賃金も伸び悩むため、日本経済の「成長率は15年度を下回る」と述べ、「1.5%前後との(官民)見通しは過大」と指摘した。

消費者物価の上昇率は、原油価格が緩やかに上昇すると仮定しても1%程度との見通しを示した。伸び悩む一因が労組の「驚くほど控えめな賃上げ要求」。背景として、日本企業が人工知能などのイノベーションで乗り遅れており、労組側が「自社の将来に不安を感じているためではないか」とした。

<補完措置で市場は「弾切れ意識」>

日銀の大胆な金融政策「量的・質的緩和(QQE)」は、「円安・株高の実現など市場への影響はマル、物価への効果は三角、成長率引き上げはバツ」と論評。大胆な金融緩和を提唱するリフレ派が主張していたように「デフレから脱却すればバラ色の経済が実現することにはならなかった」と総括した。

QQEは本来は「短期決戦型の実験」で、開始後1年での効果検証が望ましかったと指摘。今以上に巨額の国債買い入れは難しく、昨年末の「補完措置」で「市場は日銀の弾切れを意識した」と語った。

もっとも、補完措置で金融機関が担保用途の国債も日銀に売却可能となり、「日銀は若干買い入れる国債の積み増しが可能になった」とも指摘した。

一方、持久戦に耐えられる政策の枠組みへの転換が急務との持論を繰り返し、新たな枠組みの選択枝として「長期金利ターゲットとマイナス金利の許容」を挙げた。

*内容を追加しました

(竹本能文 編集:内田慎一)

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