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アングル:ユーロ/円の反発警戒、ECB理事会での買い戻しも
12月1日、ユーロ/円
[東京 1日 ロイター] - ユーロ/円
<ECBの追加緩和に失望リスク>
上値が重いながらも円安水準をキープしているドル/円
政策メニューとしては、1)資産購入額・購入対象の拡大、2)緩和期間の延長か撤廃、3)預金金利の2段階化、4)金利マイナス幅拡大──などが予想されている。
しかし、ドラギ総裁の積極発言以降、相場はすでに追加緩和を相当程度織り込んでいる。政策金利への思惑を映すユーロ圏無担保翌日物平均金利(EONIA)の1カ月物は、足元で15ベーシス程度のマイナス金利引き下げを織り込んだ水準。
このため緩和内容が市場予想を下回る場合、失望感が広がりやすいと警戒されている。「相場の下押しに一服感の兆しが出れば、買い戻しに乗り遅れまいと買いが殺到し、値幅を伴った急上昇が生じ得る」(別の国内金融機関)という。
みずほ銀行・チーフマーケット・エコノミスト、唐鎌大輔氏は、ECBは少なくとも、期間延長と緩和規模の拡大、マイナス金利幅の拡大を打ち出すと見ており、実際の政策メニューがより小ぶりだった場合に「ユーロ買い戻しの口実にされやすい」と指摘している。
ECB理事会が近づくにつれ、ユーロ巻き戻しに対する警戒感は強まっており「特に材料がなくても買い戻しの流れが出る恐れもある」(国内金融機関)との声も出ていた。
<膨らむ投機筋のポジション>
投機筋のポジションをみると、米商品先物取引委員会(CFTC)が発表したIMM通貨先物の非商業(投機)部門の取組(11月24日までの1週間)では、ユーロの売り越しは17万5484枚と前週の16万4177枚から増加。今年5月以来の高水準となった。
市場では「20万枚に接近すると危険水域」(国内金融機関)とされる。今年3月にユーロ/ドルが1.05ドル割れまで売られた後に短期間で1.10ドルまで巻き戻された局面では、直前の売り越し規模が約22万枚だった。
ただ、巻き戻し幅は春先ほどには広がらない可能性もある。ユーロ売り相場への乗り遅れから、ユーロ/ドル
仮にECBが追加緩和を見送った場合、ユーロ/ドルは1.10ドル程度へと巻き戻される可能性があると、SMBC信託銀行・プレスティア シニアFXマーケットアナリスト、尾河眞樹氏は指摘する。追加緩和があっても、市場で期待外れな内容と受け止められた場合も1.08ドル程度への上昇はあり得るという。
<ユーロ/円の戻りは限定的か>
ユーロが反発した場合、円への影響はどうなるか──。ECB理事会をはさんでユーロの巻き戻しが生じても、ユーロ/円の戻りは「3円程度ではないか」(国内証券)との見方が多い。
ただ、日米欧で比較した場合、来年も含め最も緩和的とみられているのがECBであり、ユーロの弱い地合いは来年にかけて変わりそうにないと多くの市場参加者が予想している。
実際、11月後半にユーロ/円が130円を割り込む直前、国内輸出企業によるまとまったユーロ売り/円買いが観測された。「業績予想でユーロ130円を前提とする複数の輸出企業が、ECBの追加緩和による一段のユーロ安を警戒し、想定レートの130円付近でユーロを売ってきた」(国内金融機関)という。
ユーロはその高い流動性と低い金利から、低金利通貨を調達して高金利通貨で運用する「キャリートレード」のファンディング(調達)通貨として、最近では円よりも選好されやすくなっている。リスクオン継続なら円に対してもユーロは売られやすい。
ユーロが反発する局面では、ドルと円はともに対ユーロで売られるとみられ、ドル/円への影響はある程度、相殺されそうだ。ユーロ/円とドル/円の相関関係は局面ごとにまちまちで、先行きの米利上げペースなどに左右されると見られている。
(平田紀之 編集:田巻一彦)