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米FOMC「経済と雇用の改善継続」、9月利上げ視野も言質与えず

2015年07月30日(木)06時56分

 7月29日、米FRBはFOMC後に声明を公表した。写真はワシントンのFRB。2013年7月撮影(2015年 ロイター/Jonathan Ernst)

[ワシントン 29日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は、29日まで開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)後に公表した声明で、米経済と雇用市場は引き続き力強さを増しているとの認識を示した。9月会合での利上げ開始へ可能性を残した。

FRB当局者は、米経済が第1・四半期の減速を克服し、エネルギー業界の低迷や海外からの逆風にもかかわらず「緩やかに拡大」しているとの考えを示した。

とりわけ最近数カ月の「底堅い雇用の伸び」に言及。「一連の雇用関連指標は総じて、労働資源の活用不足が今年初めから減少したことを示唆している」と指摘した。

6月の声明は労働市場のスラック(需給の緩み)が「幾分減少した」としており、労働市場に関する判断をFRBが今回引き上げたことを示している。

声明はまた、フェデラルファンド(FF)金利の目標誘導レンジを引き上げることが適切になるには、労働市場の「もう一段の改善(some further improvement)」を確認する必要があると指摘した。6月声明では、労働市場の「さらなる改善(further improvement)」が必要、との文言が使われていた。つまり、労働市場があともう少し改善すれば利上げすると示唆したことになり、アナリストは、最近の力強い雇用の伸びが続くことへのFRBの自信を示すものと見ている。

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのシャイアム・ラジャン氏は「(利上げの)条件とする労働市場の一段の改善に『some』を追加することによって、利上げのハードルがやや低くなった」と話している。

これを受けて、9月の利上げ観測が高まる可能性があるが、FRBは利上げに関しては明確な手掛かりは与えなかった。ただ利上げには、雇用市場の改善に加え、低水準のインフレ率が2%の中期目標に向けて加速するとのさらなる確信を持ちたいとした。

米債券市場はFOMC声明にほとんど反応せず、国債価格はおおむね軟調。米株式市場は上昇、ドルは通貨バスケットに対して上昇した。

<利上げに向け小さな一歩>

FOMC声明ではまた、リスクは「ほぼ均衡している」との文言を維持した。インフレ高進よりも経済が再び低迷することをより懸念していることを示唆した。

中銀当局者や市場関係者の焦点は、年初の米経済減速が景気拡大の終了なのか、単なる踊り場なのかを見極めることだったが、答えはもう固まったようだ。

ウェルズ・ファーゴ・ファンズ・マネジメントの首席ポートフォリオストラテジスト、ブライアン・ジェイコブソン氏は「FRBは利上げに向けてわずかな一歩を踏み出した」とし「雇用市場は十分改善しており、FRBは利上げの時期が来たと言える確証があと少し必要なだけだ」と話した。

先週公表されたロイターのエコノミスト調査によると、米経済成長は今年後半に向けて持ち直し、FRBは9月に利上げに踏み切るとの見方が大勢となった。別のロイター調査でも、米大手銀行がFRBの利上げ開始時期として、9月の可能性が最も高いと見ていることが分かった。

8月はFOMC会合は予定されていないため、FRBはあと2カ月分のデータを見極め、9月会合では2006年以来およそ10年ぶりとなる利上げ開始の是非を判断する。

FRBはFF金利の誘導目標を据え置くことを決めた。反対票を投じた参加者はおらず、決定は全会一致だった。

*内容を追加して再送します。

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