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焦点:中国指数連動ファンドの弱点、漢能薄膜発電の暴落で露わに

2015年05月25日(月)12時45分

 5月22日、中国のソーラー発電会社、漢能薄膜発電の株価が暴落した煽りで、複数のインデックス運用型株式ファンドが痛手を被った。写真は上海の証券会社で12日撮影(2015年 ロイター/Aly Song)

[香港/シンガポール 22日 ロイター] - 中国のソーラー発電会社、漢能薄膜発電<0566.HK>の株価が暴落した煽りで、複数のインデックス運用型株式ファンドが痛手を被った。中国のような変動の激しい市場におけるインデックス運用の欠陥が露わになった格好だ。

漢能薄膜発電株は20日、1時間足らずで47%下落し、売買停止に追い込まれた。

これを受け、約2000億ドルを運用するグッゲンハイム・インベストメンツは21日、同社のソーラー発電株上場投資信託(ETF)が指標としている「MACグローバル・ソーラ・エナジー・インデックス」が、漢能を構成銘柄から外すことを明らかにした。つまり同ETFは漢能株の売買が再開した際に同株を売却しなければならない。

ETFはインデックスに追随したパッシブ運用が主体で、従来のファンドに比べ概ね流動性が高い。しかし構成比率の高い銘柄が売買停止に直面すると解約圧力が高まり、流動性リスクにさらされかねないとの批判も出ていた。

人気の投資手段としてETFが台頭してきた中国市場には、特にこうした指摘が当てはまる。リッパーのデータによると、中国株に特化したETFおよび、インデックス運用が成されている資産の規模は3月末までの5年間で75%超増えて1320億ドルに達した。

モーニングスター・アジアのETFストラテジスト、ジャッキー・チョイ氏は「ETFは素晴らしい投資手段だが、有能なアクティブ運用マネジャーの方がうまく対処できるような状況も時としてある。ETFは百種百様なので、投資家は裏付け証券に留意してそれぞれのETFを区別して取り扱う必要がある」と話す。

米ブラックロックや米バンガードを含む世界最大級のパッシブ型資産運用会社が漢能株に投資している。ブラックロック・インスティテューショナル・トラスト・カンパニーは漢能株を約1億8300万ドル相当保有する6番目の大株主だ。

<売買停止が苦境に拍車>

株式が売買停止に陥ると、パッシブ運用を手掛けるマネジャーの苦境はいよいよ深まる。香港と中国の市場では、停止期間が数カ月から数年に及ぶこともある。

売買停止期間が長くなると、その銘柄を組み入れているETFは代用銘柄を見出す必要に迫られ、指標としているインデックスとの齟齬が生じやすくなる上、流動性の問題も生じかねない。

一部の専門家によると、1銘柄に集中投資しているファンドの場合には解約中止を余儀なくされる可能性さえあり、投資家はこの銘柄から足を洗えなくなりかねない。

ドイツ銀行のアジア太平洋パッシブ資産運用責任者、マルコ・モンタナリ氏は、ETFの裏付け資産が乱高下して流動性が脅かされるような場合、ETF運用会社は解約中止という「極端な措置」に踏み切りかねないと指摘した。

(Denny Thomas、Muralikumar Anantharaman記者)

ロイター
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