ニュース速報

アングル:英首相のEU離脱最終提案、ポイントは何か

2019年10月05日(土)09時03分

[ロンドン 2日 ロイター] - ジョンソン英首相が、欧州連合(EU)離脱に向けた最終提案を発表し、これが受け入れられなければ、英国は10月31日に合意なしで離脱すると警告した。

今回の提案のポイントは以下の通り。

◎アイルランド国境問題における「安全策」は削除

ジョンソン氏は「われわれが提起した妥協策は、以前の離脱協定にあった(アイルランドとの厳格な国境管理を避けるための)いわゆる『安全策』を削除した」と述べた。

同氏によると、英国は自由貿易協定をベースとしたEUとの将来の関係、つまり規制措置や貿易の問題を独自に決めることができるようになることを欲しており、EUと関税同盟で緊密に結び付いて多くの分野でEUの法令に縛られるのを望んではいない。

「このような環境で提案された『安全策』ではどこにもたどり着けず、新たな道を見つけなければならない」という。

◎1998年のベルファスト合意に関するコメント

アイルランドと英自治領北アイルランドの国境管理問題は、英国とEUが秩序あるブレグジット(英のEU離脱)を目指す合意をまとめる上で行き詰まりの原因になっている。

アイルランドは、北アイルランドとの境界に何らかの検問所や管理施設ができれば、1998年に英国と結んだベルファスト和平合意の精神が損なわれかねないとみなし、今後も厳しい管理をしないことが国益にかなうと主張している。

一方英政府は、新提案が和平合意と整合的だと説明。「われわれの提案はベルファスト合意に沿った解決策を見出すという方針に軸足を置いている。この枠組みは北アイルランド統治の土台になり、北アイルランドの保護は何よりも優先される」と強調した。

◎アイルランド全島の同一規制ゾーン化

英政府によると、今回の提案で北アイルランドを含めたアイルランド島全体が1つの規制ゾーンとなり、全ての工業品や農産品が対象になる。

「これによって北アイルランドの規制体系は確実にEUと同一化され、北アイルランドとアイルランド間の貿易に関する全ての検査がなくなる」という。

◎同意

この規制ゾーン実現は関係者の同意が必須となる。北アイルランドの自治政府と議会には、EU離脱の移行期間中とその後4年ごとに、こうした枠組みを承認する機会が与えられる。

◎英国の関税同盟離脱

2020年末の移行期間の終了とともに、北アイルランドはEUの関税同盟を脱して、完全に英国の関税圏に入る。

英国は移行期間終了時にEUの関税同盟から離脱する。

ジョンソン氏は「われわれは全面的に(関税同盟を)離れなければならない。通商政策のコントロールは、われわれの将来図にとって基本的な要素だ」と語った。

◎製品基準

移行期間が終わった後は、北アイルランドは農産品と工業製品について、EUの基準に従う。英国から北アイルランドに入ってくる農産品は、英当局が(英本土側の)検査場所で、EUのルールに基づいて検査や書類作成などを行う。

その結果、北アイルランドからアイルランドに入る製品は検査する必要がなくなる。

アイルランドから北アイルランドに入る物品については、英国は同等の検査をしない。

◎通関

移行期間の後、英国とEUは異なる関税領域になるため、アイルランドと北アイルランドの境は通関国境になる。

しかし英国はこの国境で通関検査と管理を行う必要がないと宣言する。

北アイルランドとアイルランドのすべての物品の動きは申告制にする。

ごく一部の物品の動きの検査が、貿易業者の近辺か、アイルランドもしくは北アイルランドの指定された場所で行うこともある。

以上のような取り組みは、信頼される貿易業者のスキームと単純化した通関手続き、一時的許可などの措置で支えられる。

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、エヌビディアAI半導体の中国販売認可を

ワールド

習氏、台湾問題で立場明確に トランプ氏と電話会談=

ビジネス

EU、AIの波乗り遅れで将来にリスク ECB総裁が

ワールド

英文化相、テレグラフの早期売却目指す デイリー・メ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 10
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中