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アングル:「助けて」と訴える収容者、米国移民施設の実態
Doina Chiacu and Jonathan Allen
[ワシントン/ニューヨーク 2日 ロイター] - 米政府の監察組織は2日、危険な過密状態にあるメキシコ国境の移民収容施設が、さらに複数確認されたと発表し、テキサス州南部のリオグランデバレーにある混雑した施設内の写真を公開した。これらの施設では、一部の子どもたちがシャワーを浴びることもできず、冷えた食事のみを与えられていた。
米国土安全保障省の監察組織が作成した報告書は、この過密状態が「今にも爆発しかねない時限爆弾」のようだと指摘。施設の監督責任者らは、収容者やスタッフの健康と安全を懸念しているという。
報告書は6月中旬、リオグランデバレー地域にある税関・国境警備局(CBP)の施設5カ所を訪問してまとめられたもので、移民収容施設の管理状態への批判にトランプ政権が反論する中、公表された。
同監査組織は5月、テキサス州エルパソの施設で移民たちが規定で定められた数日ではなく、数週間にわたり拘束されていること、大人たちが立ったまま部屋に入れられていることなどを報告した。以来、移民収容施設の状況は米国内で大きな議論を巻き起こしている。
保安に関わる出来事として報告された事例の中には、収容者が部屋から出るためにトイレを詰まらせたこと、部屋に戻ることを拒否したこと、さらに税関・国境警備局が武力に訴えることを示すため、特殊作戦部隊を呼んだことなどが含まれていた。
調査員が到着すると、移民たちは部屋の窓をたたき叫んだという。成人男性のほとんどは、最長で1カ月収容されていたにも関わらず、シャワーを一度も浴びていなかった。写真に写った男性は、すし詰めの部屋で紙を掲げ、「助けて。40日ここにいる」と訴えた。
国境地帯の中でも、リオグランデバレーは拘束される移民の数が特に多い地域で、中米からの亡命希望者が殺到した5月は過去13年間で最多となった。調査員が訪問した当時、この施設は8000人を収容しており、うち3400人は規定の72時間を超過して収容されていた。
<飲み水はトイレから>
7月1日にエルパソの施設を訪問した連邦議員団は、移民たちが劣悪な環境の中収容されていると訴えた。
一行は視察前に携帯電話を預けるよう命じられたが、民主党のホアキン・カストロ下院議員が機器を持ち込み、部屋に詰め込まれた女性たちの動画を撮影した。
一部は50日間拘束されており、子どもと引き離された人たちもいた。15日間もシャワーを浴びていなかったり、必要な薬を与えられていない人もいたという。
民主党のアレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員は、移民がトイレから水を飲むように言われていると批判した。
これに対し、ホワイトハウスのギドリー報道官はFOXビジネス・ネットワークのインタビューで「オカシオコルテス氏が何を言っているのか分からない」と述べ、CBP職員は「地球上で最も勇敢な類の人々だ」と主張。「彼らは日々命を危険にさらしている。不法滞在者に1日3食と2回の軽食を与えている」と反論した。
トランプ氏は、2020年大統領選挙での再選に向け、不法移民対策を国内政策の柱に掲げている。しかし、当初の目標だった国境の壁は議会の承認を得られず、不法移民から子どもを隔離する政策が国民の怒りを呼び、「ゼロ寛容」政策からの転換を余儀なくされた。
ニューヨークでは2日、トランプ政権の移民への対応を非難するデモが行われ、数百人が参加した。今後は連邦議員らをターゲットとした、全国規模のデモが予定されている。
トランプ政権が今後、すでに入国している不法移民の一斉検挙に踏み切ることへの恐怖も、デモの原因となった。トランプ大統領は先月、一斉検挙を2週間延期すると発表している。
中米からの移民の流れは、5月をピークに急激に減った。米国の関税を回避するため、メキシコ政府が移民対策を強化し、武装した警官数千人を投入して警備に当たらせたためだ。
(翻訳:宗えりか、編集:久保信博)