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焦点:G20サミット、目立つ参加国の亀裂 米中首脳会談に脚光

2019年06月25日(火)14時26分

[東京 25日 ロイター] - 大阪市で28日から開催される20カ国・地域(G20)首脳会談(サミット)では、議長国・日本の力量が問われる。「反保護主義」や世界貿易機関(WTO)改革など主要議題で参加国の意見対立が鮮明となり、合意形成になお距離があるためだ。一方、世界のマーケットが注目するのは大阪で開かれる米中首脳会談で、その動向次第では、G20サミットの成果がかすんでしまう展開もありそうだ。

<G20会合はプラスチックごみ削減など議論>

日本にとって初となるG20サミットは、安倍晋三首相が外交手腕を発揮する格好の舞台として注目されている。

ただ、サミット開催が直前に迫っても、国際的な主要課題で参加国が合意に至った分野は「極めて限られている」(関係筋)という。

たとえば、「反保護主義」のテーマでは、今月8、9日に福岡市で開かれたG20財務相・中央銀行総裁会議の声明に「保護主義と闘う」との文言は盛り込まれなかった。今回のサミットでも、反保護主義への言及に米国が反対するとみられ、議長国・日本の調整の行方が注目されている。

WTO改革でも、各国の主張が食い違う。日米欧は、中国を念頭に産業補助金などの規制強化を求めている一方、中国は反発。日本はWTO上級委員会が福島などの水産物禁輸措置を認める判断を下したのを踏まえ、上級委員会による紛争解決に関する改革を目指しているが、米国は上級委員会の権限強化に消極的とされる。

安倍首相が今年1月、スイス・ダボスで提唱した「信頼性のある自由なデータ流通」といった概念に基づいて、国境を越えた自由なデータ流通なども議論される見通し。

米国や中国の巨大IT(情報技術)企業によるビッグデータの囲い込みなどをけん制する狙いがある。

ただ、関係筋によると、米国は中国が一方的にデータを吸い上げかねないとして、この問題で慎重姿勢を維持。欧州は個人のプライバシー保護を重視する姿勢で、議論への影響が注目される。

こうした中で、相対的に意見が一致しやすい海洋プラスチックごみの削減問題では、15━16日のエネルギー・環境閣僚会合において削減に向けた行動計画の継続的実行への枠組みを日本が提案。サミットでも一定程度の合意が期待されている。

<米中首脳会談、話し合い継続で合意か>

グローバル市場では、G20サミットよりも並行して開かれる米中首脳会談の行方に高い関心が集まっている。24日に米中閣僚による電話協議が先行して行われ、対話継続の意思が確認された。

米政府高官は24日、29日の米中首脳会談で「どのような結果になっても、かなり満足だ」と述べており、市場関係者の間では、今回の首脳会談では、協議の継続で両国が合意し、3250億ドル相当の中国からの輸入品への25%関税の賦課の期限が、一定程度、延期されるのではないかと観測が広がっている。

しかし、一部の市場参加者は「2000億ドル分の関税賦課によって、中国経済はすでにかなりの影響を受けており、中国経済の減速傾向がどのようになっていくのか注視が必要」(国内銀行関係者)との声も出ている。

米ロ首脳会談の行方も注目されている。プーチン大統領は20日のテレビ番組で、会談が実現すれば、経済関係を含む両国関係の正常化に向けた一助となると発言。サイバーセキュリティー問題でも協議したいと述べた。

安倍首相も精力的に各国首脳と会談する。まず、4月のワシントン、5月の東京に続き3カ月連続で行われる日米首脳会談では、外交・安全保障から経済問題まで幅広いテーマで意見が交わされる見通し。緊張高まるペルシャ湾岸情勢や米朝関係、日米通商交渉などで、トランプ大統領がどのような見解を表明してくるのか、日本政府関係者も神経をとがらせている。

日ロ首脳会談では、北方領土問題が主な話題になるとみられるが、プーチン大統領が22日に放映された国営テレビのインタビューで「(北方領土を日本に引き渡す)計画はない」と明言。今回の首脳会談における成果がどのようになるのか、不透明感が高まった。

日中首脳会談は、G20会合に先立つ27日に予定されている。安倍首相は昨年10月の訪中以降、日中関係はかつてないほど改善していると繰り返しているが、訪中時に表明した知的財産権などを巡る日中協力の多くは、その後進展していない。

直近では米国による対中包囲網に対し、日本が積極的に関与する姿勢を示しており、中国側の反応が注目されている。

日韓首脳会談は、徴用工問題打開の見通しが立たない中、開催が見送られるのではないかとの見方が日本側にある。

(竹本能文 編集:田巻一彦)

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