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米、ロシア疑惑報告書公開 司法妨害の可能性ある大統領の行動を列挙
[ワシントン 18日 ロイター] - 米司法省は18日、2016年大統領選のロシア介入疑惑を巡るモラー特別検察官の捜査報告書を公開した。トランプ大統領がモラー氏の排除を側近に訴えるなどしていかに捜査の妨害を試みたかが詳細に記されており、司法妨害の罪を犯した可能性について疑問を残す内容となっている。
野党民主党は、大統領の不正行為を裏付ける憂慮すべき証拠が含まれており、議会の調査が必要になる可能性があると指摘。ただ、弾劾裁判にかけようという動きは現時点で出ていない。
モラー氏は448ページに及ぶ報告書で、大統領による司法妨害を示す事例を数多く取り上げたが、罪を犯したとは結論付けなかった。一方、潔白も証明していない。モラー氏は、大統領が法律を違反したどうかについては、議会に調査の権限があると指摘した。
報告書には「議会が大統領の誤った職権行使に妨害法規を適用する可能性があるとの結論は、チェックアンドバランスをうたう憲法制度や、法の上に立つ人はいないという原理原則にかなう」と記されている。
モラー氏は、ロシア政府とトランプ陣営の間の「多数のつながり」が判明し、陣営が「ロシアの取り組みを通じて窃盗・公表された情報によって選挙で恩恵を受けると見込んでいた」と報告。これはハッキングされた民主党陣営の電子メールを指している。
ただ、選挙介入で双方が犯罪的共謀に関与した十分な確証は得られなかったと結論付けた。
大統領はホワイトハウスでのイベントで、報告書公表を受け「良い1日になった」と歓迎する姿勢を強調。「共謀も司法妨害もなかったということだ」と述べた。同氏の法務チームは報告書は大統領側の「完全な勝利」と主張した。
トランプ氏は同日夜、週末を別荘で過ごすためにフロリダ州に到着した際、集まった人々に「ゲームオーバーだ。通常業務に戻るよ」と語りかけた。
報告書は、機密情報などを保護する理由で一部を除いて公表された。大統領がどのようにしてモラー氏排除を試みたかや、自身の無実を公に保証するよう政権メンバーらに指示したか、モラー氏に協力させないために元側近に恩赦をちらつかせたかについて、新たな詳細が示された。
「捜査に影響を及ぼす大統領の試みは大半が成功しなかった。大統領を取り巻く人々が指示を実行しなかったか要求を受け入れなかったことが主因だ」と報告している。
大統領はモラー氏が特別検察官に任命されたことで自身の職が終わりを迎えると考えていたことも分かった。
当時のセッションズ司法長官が17年5月にモラー氏任命を大統領に報告した際、大統領は「何てことだ。これはひどい。これで私の大統領職は終わりだ」と述べた上で、「なぜこのような事態になったのか」と失望感を示したという。
バー司法長官は記者会見で、モラー氏が報告書の中で大統領に関する10の事例の詳細を示し、これらを「司法妨害に関連付け得る」法理論について議論したと説明。同長官は前月、当時未公開だった報告書に基づき、大統領は罪を犯していないと断定していた。
報告書は、大統領が連邦捜査局(FBI)の捜査によって「自身の陣営と個人的な活動に関する事実」が明らかになることに警戒していたと伝えている。このような事実が犯罪行為か個人的・政治的な懸念を引き起こすものと大統領が認識していた可能性があるという。
下院司法委員会のナドラー委員長(民主)は、未編集の報告書を入手する召喚状を出す方針を表明、モラー氏に5月23日までの証言を求めた。ナドラー氏は記者団に、モラー氏は議会に指針を示す意図で報告書をまとめたのかもしれないとの見方を示した。ただ弾劾について語るのは「時期尚早」とした。
下院の6つの委員会の民主党所属委員長は、「トランプ大統領がいかに、非常に重要で正当な捜査を妨害しようとしたかについて深刻な疑惑」が盛り込まれているとの声明を出した。
民主党議員の多くは大統領弾劾への言及を避けたが、リベラル派の代表格であるアレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員はツイッターへの投稿で、弾劾について積極的に語りたいわけではないとしながらも「報告書は正面を切って弾劾をわれわれ側に近づけた」と表明した。
<大統領選介入>
報告書は、大統領の司法妨害の可能性を分析するにあたり、モラー氏の排除や同氏による捜査の範囲を限定することを狙った試みや、16年6月にニューヨークのトランプ・タワーでのトランプ陣営幹部とロシア人との会合が世間に知れることを防ごうとして取った行動などの事例を取り上げている。
大統領は17年6月、当時ホワイトハウスの法律顧問だったマクガーン氏に対し、モラー氏には利益相反があり、解任の必要があると当時の司法省のナンバー2にに伝えるよう指示したという。だが、マクガーン氏は指示を実行しなかったと報告している。
下院司法委のジェイミー・ラスキン委員(民主)はマクガーン氏とセッションズ前司法長官が議会で証言すれば貴重な発言が期待できると指摘した。
報告書によると、大統領が17年5月にコミー前FBI長官を解任したのは、長官に「大統領個人は捜査の対象でないと公に表明する気がなかった」ことが理由だと示す「重要な証拠」があるとしている。FBIは当時、ロシア疑惑捜査を率いていた。
大統領の就任前にフリン元大統領補佐官がロシア大使に電話を掛けていたことを大統領が知っていた「複数の証拠」についても指摘。ただ証拠は「決定的なものではなく」、大統領の妨害の意図を立証するには使えなかったという。
報告書は、大統領が元陣営幹部に対し、セッションズ前長官にロシア疑惑捜査は「非常に不公正」と言うように要求する指示を出していたとも明らかにした。
バー長官は記者会見で大統領を擁護。「大統領は前例のない事態に直面した。大統領に就任し、その責任を遂行しようとしているのに連邦捜査官と検察官が就任前と後の行動について調べるという状態にあった」とし、捜査が大統領の職責を阻害していると真に捉え、不満と怒りを抱いていたという重要な証拠があると報告書で認められていると述べた。
報告書ではまた、捜査終盤での「大幅な遅れ」につながる可能性があるため、モラー氏の捜査チームが大統領に事情聴取に応じることを強制する召喚状を出さなかったことも明らかになった。
モラー氏は現職の大統領を刑事訴追することはできないとする司法省の長年の見解を受け入れたとした。
捜査側は、大統領の長男ドナルド・トランプ・ジュニア氏が選挙資金関連法に違反したことを示す「合理的な主張」が存在すると断定したが、有罪に持ち込める見込みがないと考えたと報告されている。
*内容を追加しました。