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焦点:米大手銀の預金・顧客獲得競争、ワシントンが主戦場に

2018年12月17日(月)08時06分

[ワシントン 12日 ロイター] - 米銀大手は2007─09年の金融危機以降に抱えていた規制面の問題が片付き、トランプ政権の減税で手元資金が潤沢になったことから、積極的に預金や顧客の獲得競争を繰り広げている。その主戦場の1つになっているのが、首都ワシントンだ。

今年に入ってワシントンに初めていくつかの支店を開設したのはJPモルガン・チェース。同行はこの地域を人口や総生産ベースで全米第3位の規模とみて、力を注ぐ。

ワシントンとその周辺はまだどの銀行も支配的な地位を確立しておらず、預金量シェアの上位3行は14─17%で推移している。対照的にニューヨーク市内では、JPモルガンの「チェース」ブランドのシェアが32%に達する。

また各行にとってワシントンは、ブランドイメージを構築するとともに、学生や政府職員として一時的に滞在するだけの人たちを長年の取引相手として取り込むチャンスを提供してくれる場所でもある。

こうした中でJPモルガンは、ワシントンとボルティモアに計70のチェースの支店を設ける計画だ。

5年前なら、ワシントンに150店を持ち、この地域の預金シェア首位を誇るバンク・オブ・アメリカ(バンカメ)に対抗するため、同じ数の支店を開設しようとしただろう。しかしJPモルガン幹部の話では、ATM(現金自動預け払い機)だけの設置やモバイルアプリなどの方法を駆使し、支店数の少なさを十分補える見込みだという。

これに対してJPモルガンを迎え撃つバンカメは、新しいATMを投入したり、ローン専任担当者にビデオを通じて相談できる部屋を新設するなど、既存店舗の刷新に動いている。

一方、預金シェア第2位のキャピタル・ワン・ファイナンシャルの路線は毛色が異なる。支店数を削減しつつ、カフェを備えたサービス拠点を開設しているからだ。こうした拠点は法的には銀行の支店とみなされず、設立に際して規制当局の承認は必要ない。だがATMはあるし、キャピタル・ワンのアプリに接続するための「Wi─Fi(ワイファイ)」が備えられ、顧客が困ったときに質問したりオンライン口座を開く手続きをするための行員も配置されている。

こうした各行の戦略の成否が、収益面で勝ち組になるか負け組になるかを決める可能性がある。人員や不動産を確保し、小切手および現金を取り扱うことになる支店開設の費用は莫大だ。さらに新たな規制によって、大手銀にとって支店の預金は価値が高まった面もある。

金利が上昇し、預金の他行への流出を防ぐには顧客サービスが重要な要素になっているため、各行とも早急な取り組みを迫られている。

(David Henry記者)

ロイター
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