コラム

トランプが命じた「出生地主義の廃止」には、思わぬ悪影響が潜んでいる

2025年01月31日(金)12時28分
トランプ

トランプの大統領就任当日も国境地帯には移住希望者の姿が CARLOS MORENOーSIPA USAーREUTERS

<ドナルド・トランプが大統領令でアメリカの国是である出生地主義廃止を命じた。多くのアメリカ人が国境をコントロールできていないと感じているが、この措置には思わぬデメリットがある>

この父にして、この子あり。アメリカが非プロテスタントの白人移民の大量流入に悩まされていた1927年、ドナルド・トランプの父フレッドが逮捕された。白人至上主義団体KKK(クー・クラックス・クラン)の集会に白い装束を着て参加し、移民によって「アメリカの唯一の国旗と唯一の言語」が脅かされているなどと主張したためだ。

98年後、その息子は米大統領に返り咲いた初日に、「出生地主義」を廃止する大統領令に署名した。これまで約150年以上にわたり、アメリカで生まれた人に対して自動的に市民権を付与してきた制度だ。来年で建国から250年、「アメリカ人」の定義をめぐって時に暴力も絡んだ闘争は、まだ終わりを告げていない。


出生地主義は、合衆国憲法修正14条で定められている。アメリカは民主主義や法の秩序、個人の権利、あらゆる宗教や人種に対する寛容など一連の理想によって織り成されており、それを信じる人々の集まりによって成り立っているという考え方だ。

だがアメリカは、建国時の白人プロテスタント系の国民が非白人・非プロテスタントの移民の大量流入に脅威を感じ、反移民を掲げるという事態を何度も経験してきた。反移民感情が高まると、市民権を血筋や生まれながらの特性によって制限すべきだとの声が高まる。この制限を、トランプは不法移民対策の一環としてやろうとしている。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中ロ、一方的制裁への共同対応表明 習主席がロ首相と

ワールド

ドイツ、2026年のウクライナ支援を30億ユーロ増

ワールド

AI端半導体「ブラックウェル」対中販売、技術進化な

ワールド

チェイニー元米副大統領が死去、84歳 イラク侵攻主
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 6
    高市首相に注がれる冷たい視線...昔ながらのタカ派で…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    【HTV-X】7つのキーワードで知る、日本製新型宇宙ス…
  • 10
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story