コラム

全部がプーチンのせいではない、2023年の世界を待つ「5つの危機」とは?

2023年01月10日(火)11時53分
ザポリッジャ

ウクライナ戦争は2月で開戦1年になる(1月5日、ザポリッジャ) REUTERS

<ウクライナ戦争、世界経済、エネルギー供給、食糧供給、地球温暖化......。ウクライナ戦争をきっかけに世界の流れは大きく変わったが、すべてがプーチンが直接的な原因ではない理由について>

2023年の世界を脅かす5つの危機のうち4つは、直接もしくは間接的に、ロシアのプーチン大統領がウクライナ侵攻を開始した昨年2月24日の朝にさかのぼる。

プーチンの戦争が原因で、世界の政治システムは第2次大戦以降で最大の危機に直面し、世界経済は激しいインフレに苦しんでいる。そして、エネルギー市場では空前の大激変が起きていて、食料市場は深刻な供給不足に見舞われている。

もう1つの危機だけがプーチンと直接関係がない。今年、世界を悩ます5つの危機を見ていこう。

◇ ◇ ◇


■ウクライナ戦争

ウクライナ戦争は今年も世界の安定を揺るがし、核兵器使用のリスクを高め、各国の経済をかき乱すだろう。

アメリカなどの武器支援によりウクライナ軍の能力と士気は高い水準を維持すると思われるが、ロシアもまだ(途方もない数の兵士を失いつつも)ウクライナに甚大な打撃を及ぼせる軍事力を擁している。

今後の焦点はウクライナ、ウクライナを支援する国々、ロシアが戦闘継続に向けて国内の結束を維持できるかどうかだ。

■世界経済の苦境

これはプーチンだけが原因ではない。ウクライナ戦争以前に、新型コロナのパンデミックにより、世界経済は既に大きなダメージを被っていた。

コロナ禍の3年間、世界の国々が国境を閉ざし、社会・経済活動を制限した結果、世界規模で深刻な供給不足が発生。その後、コロナ対策が緩和されて需要が急増すると、需給ギャップが拡大した。それに加えて戦争を機にエネルギーと食料の価格が高騰し、インフレ率は過去40年で最も高い水準に達している。

欧米の中央銀行は、インフレ対策で金利を引き上げ始めた。一方、新興国の経済は欧米の利上げの影響とサプライチェーンの混乱で打撃を受けている。今年は世界規模の景気後退が始まる可能性もある。

■エネルギー供給の逼迫

プーチンが始めた戦争は、世界のエネルギー市場に混乱と激変をもたらしている。ヨーロッパ諸国は、対ロシア制裁の一環としてロシア産の石油・天然ガスの輸入を減らし、アメリカ産の液化天然ガス(LNG)に切り替える計画に乗り出した。30年までにエネルギー生産の45%を再生可能エネルギーに転換することも目指している。

今年は、ヨーロッパ以外の国々も、ウクライナ戦争によるエネルギー市場の混乱への対応を迫られそうだ。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

デンマーク、米外交官呼び出し グリーンランド巡り「

ワールド

赤沢再生相、大統領発出など求め28日から再訪米 投

ワールド

英の数百万世帯、10月からエネ料金上昇に直面 上限

ビジネス

英生産者物価上昇率、6月は2年ぶりの高水準
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 3
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪悪感も中毒も断ち切る「2つの習慣」
  • 4
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 5
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 6
    「美しく、恐ろしい...」アメリカを襲った大型ハリケ…
  • 7
    「どんな知能してるんだ」「自分の家かよ...」屋内に…
  • 8
    【クイズ】1位はアメリカ...稼働中の「原子力発電所…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    イタリアの「オーバーツーリズム」が止まらない...草…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 3
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 6
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 7
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 8
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 9
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 10
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 10
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story