コラム

ポランスキーは銀行を救う生贄だった?

2009年10月01日(木)16時45分

 スイスが今になってロマン・ポランスキー監督を拘束したのは、脱税幇助で米当局の取り調べを受けているスイス銀行最大手UBSに手加減してもらうための取引ではないか――9月29日付のロサンゼルス・タイムズ紙がそんな憶測を報じた

 噂のきっかけは、ロマンスキーの拘束とUBSに対する脱税捜査の関連を論じたAP通信社内のやり取りが27日、あやまってネットに流出したこと。スイス司法省は、いかなる関連も否定した。

 実際、これはあまりできのよくない陰謀論に見える。ロサンゼルス郡検察は、31年前の少女淫行事件以降ずっと、本当に真剣にロマンスキーを捕まえようと手を尽くしてきたと主張する。だが、米司法省にとってポランスキーの追跡がそれほど優先度の高い案件だったとはとても思えない。少なくとも、オバマ政権の脱税摘発にかける熱意とは比べるべくもない。

 ポランスキーが何年も前からスイスの自宅で休暇を過ごしてきたことを考えれば、今回の拘束のタイミングは、確かに唐突で不自然だ。

 だが、スイスは各国の司法当局に対してより協力的になろうとしているようだ。秘密主義でならしたスイスの銀行のUBSが、脱税の疑いがある顧客データを米当局に公開したのもその一例。

 ポランスキーの拘束は、国際的な無法地帯という汚名を返上しようとするスイスのより大きな試みの一環ではあるだろう。だが、UBSとの交換条件が存在したという説は疑わしい。

──ジョシュア・キーティング
[米国東部時間2009年09月30日(水)12時09分更新]


Reprinted with permission from "FP Passport", 1/10/2009. © 2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、有権者ID提示義務化へ 議会の承認なく

ビジネス

NY外為市場=ドル横ばい、米CPI受け 円は週間で

ワールド

米政権、鉄鋼・アルミ関税引き下げ報道を否定 「決定

ビジネス

米CPI、1月は2.4%に鈍化 基調インフレ圧力は
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の定説に挑む、3人の日本人科学者と外科医
  • 4
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベル…
  • 5
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 6
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    毛沢東への回帰? それとも進化? 終身支配へ突き…
  • 9
    「ドルも弱い」なのになぜ、円安が進む? 「ドル以外…
  • 10
    「賢明な権威主義」は自由主義に勝る? 自由がない…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story