コラム

ハリポタ『謎のプリンス』にバチカンも宗旨替え

2009年07月15日(水)17時25分

 ついにこの日がやってきた。『ハリー・ポッターと謎のプリンス』が、8カ月間の延期の末、明日やっと公開になる。シリーズ6作目となるこの作品への期待で世界は騒然。ワシントンでは今朝、アップタウン劇場のチケット売り場の前でキャンプを張り、徹夜で並ぶ覚悟でいる気の早い4人のティーンエージャーを見かけた。

 謎のプリンスを取り囲むミステリアスな雰囲気はカトリック教徒の総本山バチカンまで及び、ローマ法王さえ魔法にかけてしまったようだ。ローマ法王庁が発行する日刊紙オッセルバトーレ・ロマーノは映画評でこの作品の道徳的な水準の高さに着目し、シリーズ最高作と称賛した。


 (この映画は)善と悪の間に明確な線引きをし、善が正義であることを鮮明にしている。観客は、善が時には大変な努力と犠牲を伴うものであることも理解するだろう。


■以前は「たちの悪い英雄」と批判

 世界中の長年のポッター・ファンは「そんなの当たり前だ!」と一蹴するかもしれないが、ローマ法王としては大きな変化だ。ベネディクト16世は最近までハリポタのファンではなく、J・K・ローリングの原作を「巧妙な誘惑」と批判したこともある。

 08年には、オッセルバトーレ・ロマーノも若いハリーについてこう書いていた。「こういう不信心な青年を英雄として描くのは間違いだし、悪意を感じさせる。あからさまに反宗教的なキャラクターよりたちが悪い」

 だがひょっとするともっと衝撃的なのは、ハリー・ポッターを演じるダニエル・ラドクリフがガールフレンドを見つけられないことかもしれない。マグルの女の子たちが口々に「私を見て!」と叫ぶのが聞こえるようだ。

──レベッカ・フランケル
[米国東部時間2009年07月14日(火)14時44分更新]


Reprinted with permission from FP Passport, 15/7/2009. © 2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英生保ストレステスト、全社が最低資本要件クリア

ビジネス

インド輸出業者救済策、ルピー相場を圧迫する可能性=

ワールド

ウクライナ東部の都市にミサイル攻撃、3人死亡・10

ワールド

長期金利、様々な要因を背景に市場において決まるもの
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 5
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 6
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 9
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 10
    反ワクチンのカリスマを追放し、豊田真由子を抜擢...…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story