コラム

イランは米国人記者を釈放、北朝鮮は?

2009年05月12日(火)01時42分

 イラン在住の日系アメリカ人記者ロクサナ・サベリを、イラン政府が釈放したとの発表には安堵した。彼女はアメリカのためにスパイ活動を行ったとして有罪判決を受けていた。

 今年1月にサベリが拘束された理由は、ワインの購入だった。だが拘束中、彼女が記者証を持っていないことが判明(06年に失効)。たった1時間の裁判の結果、虐待で悪名高いエビン刑務所に送られ、禁固8年の判決が下された。

 今回のサベリの釈放で、拘束中の別のジャーナリスト2人の窮状に注目が集まることを期待している。その2人とは、アル・ゴア元副大統領が設立したケーブルテレビ局「カレントTV」の記者ユナ・リーと、ローラ・リンだ。

 2人は3月末から北朝鮮で拘束されている。ウォールストリート・ジャーナル紙は次のように報じている


 ロクサナ・サベリに比べ、米当局者はリーとリンについてはあまり言及していない。北朝鮮を刺激しない方が早期解決につながるかもしれないとの期待があるからだが、対北朝鮮外交が不透明感を増していることの表れでもある。

 米当局者は2人のジャーナリストの現状にあまり言及していないが、北朝鮮当局との間で進展がないことは示唆している。米政府に属していない情報筋によれば、北朝鮮はアメリカとの対話に一切応じていないという。


 米マクラッチー紙は次のように報じた。


 北朝鮮は平壌市内にある外交用の建物内に2人を拘束しているようだ。

「彼女らは招待所の1つに収容されているとの噂がある」と、ジョージア大学の北朝鮮専門家パク・ハンシクは言う。パクは2人が拘束された後、民間のアメリカ代表団の一員として北朝鮮を訪問した。彼はCNNに対し、2人がひどい扱いを受けているのではないかという代表団の懸念を北朝鮮側が一蹴したと語った。

「彼らは『ここはグアンタナモではない』と笑った」


 それでも不安は消えない。米政府はイランとは、対北朝鮮よりもはるかに多くの対話を重ね、関係も徐々に改善しつつある。そもそも米イラン両政府には、サベリ事件が大失態に発展することを避ける共通の利害もあった。

 リーとリンについては、そうした事情がない。米朝間を取りもつ在朝スウェーデン大使が釈放交渉にこぎ着けても、使えそうなアメとムチはない。北朝鮮側が寛大な処置を取る理由もほとんどない。

 一方でアメリカは、イラクで拘束している外国人ジャーナリストを釈放するか起訴することを検討してほしい。米政府は昨年9月の家宅捜索で逮捕したロイター通信カメラマン、イブラヒム・ジャサムを、安全を脅かす人物だとして拘束し続けている。イラクの裁判所が釈放命令を出したにもかかわらずだ。

 世界各国で拘束されているジャーナリストのリストと情報については、ここここを見てほしい(国別では中国が最悪だ)。

──アニー・ラウリー

Reprinted with permission from FP Passport, 13/05/2009.© 2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン南部の原発に飛翔体、1人死亡 南西部の石化施

ワールド

トランプ氏、イランに「48時間以内」と圧力 イスラ

ワールド

アングル:インド、酷暑で電力・水インフラに負荷 需

ワールド

トランプ氏が閣僚刷新検討 イラン戦争が打撃 選挙控
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 2
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 3
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 4
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 5
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 6
    イラン戦争は「ハルマゲドンの前兆」か? トランプ…
  • 7
    【写真特集】天山山脈を生きるオオカミハンター
  • 8
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 9
    中国は「アカデミズムの支配」を狙っている? 学術誌…
  • 10
    血圧やコレステロール値より重要?死亡リスクを予測…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 3
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 4
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が…
  • 5
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 6
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 7
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 8
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 9
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 10
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story