コラム

日本のドラマと鳩山は韓流に学べ!

2010年06月01日(火)15時59分

今週のコラムニスト:コン・ヨンソク

 韓流は終わるどころか日本社会に完全に根付き、1つのジャンルとして定着しつつある。しかも最近では従来の恋愛ドラマやイケメン男優スターだけでなく、新たな展開も見せ始めた。ドラマについては時代劇やアクション、ホームドラマと人気のジャンルが多様化し、BIGBANGやガールズ・グループなどK−POPにも熱い視線が集まっている。

『日経エンタテインメント!』が「ネオ韓国エンタ最新事情」について特集し、『AERA』がイ・ビョンホンを表紙に使って「韓流で一日中バラ色」という特集を組むなど、マスコミも第2次韓流ブームを積極的に取り上げている。久しくおとなしくしていたアンチ韓流や嫌韓派の人たちにとっても、活躍の場が訪れそうで朗報といえるだろう。

 韓流の代名詞といえばやはりドラマだ。日本が音楽&バラエティ大国であるなら、韓国はドラマ大国だ。現在の韓国においてドラマは「国技」といえる。大晦日の夜、日本では紅白歌合戦やカウントダウンライブなど、歌番組が長年花形だったが、近年の韓国では4つの地上波のうち、2つが演技大賞(KBS、SBS)を生放送している(MBCは30日に放送)。

 その年のドラマを中心に、最優秀作品賞や男優・女優賞などを決めるというものだ。続々と紹介される話題作と、華麗なスターたち・・・。あらためて韓国のドラマ、人材の豊富さに目を見張らざるをえない。

 韓国ドラマは本当に面白い! 東京ラブストーリーからラブジェネ、ロンバケ、白線流し、白い巨塔、のだめ、ハゲタカ、ウォーカーズと、日本ドラマの大ファンだった私が言うのだから間違いない。ではその魅力の要因は何なのか? ここは韓流ドラマに学び、いまや全く私の興味を惹かなくなってしまった日本ドラマを再生しようではないか。

■韓流ドラマはベタじゃない!

 まず、韓流ドラマ第1の魅力は「役者が違う」ということだ。主演俳優はもちろん、脇役、子役まで実力を備えた役者が揃っている。アイドルやモデル出身であっても、演技はうまい。しかも決まったキャラクターやイメージにこだわることなく、絶え間なく変身や挑戦を続けている。

 ジャニーズのタレントや芸人、グラビアアイドル、アナウンサーを使うのが悪いと言うつもりはない。ただ、職業は何ですか聞かれたときに「役者」と答えられる人を、もっと使ってほしいものだ。

 第2はシナリオ。韓流ドラマと聞いて、ベタでくさいセリフが乱舞していると思っている人は、おそらく一度も韓流ドラマをきちんと観たことがない人かもしれない。ベタでくさいセリフも確かにあるが、それだけではない。不倫・離婚・家族をテーマにした重厚な大人のドラマ『私の男の女』では、「私がみなの罪を許したように、汝も隣人の罪を許しなさい」という聖書の言葉がさらっと引用される。

 09年のTSUTAYA韓流ドラマ年間レンタルランキングで6位になった『オンエアー』でも、テレビ局のドラマ・プロデューサーを演じる主人公パク・ヨンハが次のように言う。「昔は月でうさぎが餅つきをしていると信じていました。だけど科学が発達して、誰もそんなことを本気で信じなくなりました。しかし、ドラマには今でも月にうさぎがいると信じさせる力があると思います」

 韓国ドラマの人気は、視聴者の「何かを信じたい力」によって支えられているのだ。携帯小説やマンガにだけ頼るのではなく、脚本家の知的な奮起に期待したい。いつまでも北川悦吏子や三谷幸喜にばかり頼っているようでは、将来は暗い。

 そして一番重要なことだが、日本のテレビのあり方、日本社会のあり方にもメスを入れないといけない。まず、ドラマの途中に入るCMを廃止せよ。ドラマも映画も1つの芸術だ。その世界にどっぷり浸かって初めて、感情移入もできるし感動や共感も生まれる。

 いくら役者が真剣にシリアスな場面を演じても、次の瞬間、その役者がCMでニコニコしていては興ざめするだけだ。テレビとは視聴者と作り手のため、すなわち作品のためにあるのか、企業や商品のためにあるのか、真剣に悩む必要がある。

■政権交代ドラマも尻すぼみ

 それに日本ドラマは1回の放送時間が短く、枠も厳格だ。韓国ドラマは1話が約1時間ある。しかも夜の9時以降は、番組編成の時間的な縛りが緩く、終わりの時間も比較的自由に決められる。日本で韓国ドラマを放送する場合、本当は1時間のものがCMのために15分くらいカットされる。これでは原作に対する冒涜だ。

 韓国ドラマは放送枠も多くてフレキシブル。だから、主人公の成長過程や周辺の人物のことも丁寧に描ける。反響があれば放送回数を増やしてエピソードが追加される場合もあるし、その逆もある。作家や役者が途中で変わることだってある。まさに、ドラマの制作自体がドラマチックなのだ。

 一方、日本はあまりに予定調和的だ。1年の同じ時期にドラマが始まり、同じ時期に終わる。放送回数もだいたい11か12回。つかみはよくても見ているうちに展開が読めてくるし、最終回までの回数が分かっているので、最後までハラハラドキドキすることが少ない。内容も、ドラマなのに「ありえない」「強引な」ドラマチックな展開がなく、夢と愛を大切にとか、勧善懲悪的な「よいこ」のドラマで終わってしまう。

『AERA』の特集でも、韓国ドラマの魅力は「熱さ」にあることが指摘された。ドラマは社会を反映しているもの。韓国ドラマが熱いのは、それだけ韓国人や韓国社会が良くも悪くもドラマチックに生きているからだといえよう。

 日本でも政権交代で熱いドラマが始まるかと思いきや、まったくもって中途半端な展開になってしまった。これでは鳩山政権はドラマが始まらないまま、番組打ち切りになる可能性が高い。鳩山さんも米議会や米メディアに向けて、沖縄問題と日米同盟のあり方について沖縄県民の意思を汲んだ持論を熱く訴えるくらいのドラマは見せてほしかった。

プロフィール

東京に住む外国人によるリレーコラム

・マーティ・フリードマン(ミュージシャン)
・マイケル・プロンコ(明治学院大学教授)
・李小牧(歌舞伎町案内人)
・クォン・ヨンソク(一橋大学准教授)
・レジス・アルノー(仏フィガロ紙記者)
・ジャレド・ブレイタマン(デザイン人類学者)
・アズビー・ブラウン(金沢工業大学准教授)
・コリン・ジョイス(フリージャーナリスト)
・ジェームズ・ファーラー(上智大学教授)

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