コラム

「医師の宇宙飛行士」古川聡さん、27年勤務のJAXAを卒業...次のステージも「らしい」場所 7つのキーワードで知る、その功績と人柄

2026年04月03日(金)10時30分

一方、この問題をきっかけにJAXAの研究コンプライアンスに対する考えはどのように変わったのでしょうか。

松浦理事は「この3年間、同じ過ちを侵さないように、研究者をサポートする体制、研究の中身をちゃんと監視して道を踏み外さないように支援をする体制などを倫理委員会などとともに考えてきました。そもそもJAXAがどういう研究をしていくべきなのかという問題もあります」と説明し、今後は古川さんにも「研究をどうしていくべきか」という話し合いの中に入ってもらいたいと力を込めました。


6. 将来の月探査に向けた地上での活躍

新年度が始まったばかりの4月2日(日本時間)、アポロ計画以来約50年ぶりに再度月に向かうNASA(米航空宇宙局)の「アルテミス2」の宇宙船オリオンがフロリダ州のケネディ宇宙センターから打ち上げられました。

「アルテミス2」は10日間のミッションで、4人の宇宙飛行士が有人月周回飛行に臨みます。このミッションが成功すると、いよいよ28年以降に予定されている有人月面着陸計画に近づきます。

アルテミス計画は、日本人宇宙飛行士2人の月面活動が日米間で調印されて約束されたことで話題を集めていますが、JAXAが「有人与圧ローバー(宇宙飛行士が宇宙服を着ないで過ごすことができる月面探査車)」を提供することも非常に重要なポイントです。

古川さんは近年、この与圧ローバーの開発に参加し、宇宙飛行士ならではの観点からフィードバックを行っていました。退職によって、JAXA宇宙飛行士として月面探査に参加することはないものの、古川さんの功績はしっかりと月に運ばれます。

7. 宇宙での茶目っ気のある余暇活動

「準備万端」「大学教授のような」という形容や東大医学部から宇宙飛行士へという経歴から生真面目なキャラクターと思われがちな古川さんですが、余暇もしっかりと準備をして楽しみます。

ISS滞在中に余暇を過ごす姿で、とくに印象的だったのが「一人三役野球」です。

これは、元野球部の古川さんが、以前に若田宇宙飛行士がISSで「ボールを投げた後、微小重力でふわふわと動くボールを追い越してバッターボックスに立って、自分で打つ」という「一人二役野球」を行ったことに触発されて実施した宇宙環境ならではの遊びです。

「ならば自分は、1人でボールを投げて、打って、キャッチするところまでやろう」と考えた古川さんは、成功する姿を動画撮影するために宇宙生活での休日を使って1カ月くらい練習を積み重ねたそうです。その姿は海外のニュースで報じられるほど話題になりました。

「一人三役野球」を披露する古川さん
プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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