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「医師の宇宙飛行士」古川聡さん、27年勤務のJAXAを卒業...次のステージも「らしい」場所 7つのキーワードで知る、その功績と人柄
一方、筆者はかつて古川さんに「医学がバックグラウンドの宇宙飛行士どうしが専門的な宇宙医学について語ったり、健康に関する実験を主導してデザインしたりすることはありませんか」という質問をしたことがあります。答えは「残念ながらありません」でした。微小重力の宇宙空間という貴重な場所では、国家機関が設計したり研究者が公募で勝ち取ったりしたテーマをミッションとして完遂することが最重要であるため、自発的なテーマを持つのは難しいのでしょう。
今回、古川さんは大学に活躍の場を移し、教員かつ研究者という立場になりました。宇宙滞在経験や宇宙開発に携わったからこそ持てる視点から、新たな研究テーマを切り開いてもらいたいと期待しています。
4. キーワードは人材育成
JAXAでは後輩宇宙飛行士の育成にも力を注いできた古川さんは、今後は医学生という若い世代の成長をサポートします。
古川さんにとって、よい宇宙飛行士とよい医療従事者の共通点は何なのでしょうか。質問すると「どちらもチームで仕事をするので、他の人から見て『この人と一緒に仕事をしたいな』と思わせる人」という答えが返ってきました。
さらに若者全体に対するエールは「勉強だけでなく、様々なことに興味を持って経験、挑戦すると、その中から自分の得意なことが好きなことがきっと見つかってくる。そうすると将来の夢ができるので、少しずつそれを目指して頑張ってもらえたら」。古川さんは若者の夢が叶うよう応援しています。
また、宇宙飛行士を目指す次世代に対しては「チームワークの中で自分の役割を果たせるように、何か専門性を持ってほしい」とアドバイスしています。
5. 「不適切な研究」事案の苦い経験から得たもの
周囲に愛され、頼りにされて宇宙飛行士人生を歩んだ古川さんですが、過去には苦い経験もありました。2度目のISS滞在が決定し、宇宙飛行を翌年に控えた22年11月、自らが実施責任者を務める「宇宙生活を地上で模擬する精神ストレスに関する研究」で、データの捏造や改ざんなどの不正が見つかったのです。
不正は共同研究者によって行われ、古川さん自身は捏造や改ざんに関わっていませんが、戒告処分を受けました。後に古川さんは「トラスト・バット・ベリファイ(Trust, but verify:信ぜよ、されど検証せよ)」という言葉を用いて、「あのときは『専門家がやっているのだから大丈夫だろう』と任せすぎてしまった」と反省の弁を述べています。
今回の会見でも、新天地が研究コンプライアンスにはとりわけ配慮が求められる大学ということもあって、かつての事案に対する振り返りやその後について質問がありました。
古川さんは、「この件は真摯(しんし)に受け止めて、誠実に確実に仕事を行ってきました。信頼を回復できたかどうかは自身が判断することではないのですが、今後も信頼を取り戻せるように続けていきたいと思います」としたうえで、「しつこく確認する人になってしまって時々嫌がられますが、それでも確認したほうがいいという基本姿勢を続けています」と話していました。
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