コラム

AIはどこまで進んだか?──AI関連10の有望技術と市場成熟度予測

2017年03月02日(木)15時20分

■テキスト解析と自然言語処理

AIを使って、文章に何が書かれているのかを把握する技術。この技術のカテゴリーには、Twitterなどのソーシャルメディアの文章を解析するために使われるツールなどが含まれる。

Forresterによると、このカテゴリーは既に市場拡大期の後半に入っており、1年から3年で安定期に入るという。

しかしこれもまた米国での話。英語に比べて日本語は、単語がスペースで区切られていないなどの理由で、解析が難しいとされている。なので、日本では市場拡大期にはまだ入っていないのではないかと思う。

ただ単語をベースにした解析ではなく、文字を数字に置き換えて、あとはAIに統計処理をさせることで、文章が何を言っているのかを理解する手法に注目が集まっている。こうした手法で、日本でも市場が今後急速に拡大する可能性があるのではないかと思っている。

■ロボティック・プロセス・オートメーション

ロボティックとあるが、これは製造業の話ではなく、オフィス業務の自動化の話。工場をロボットで自動化する要領で、オフィスも自動化しようという意味で、ロボティックという言葉が使われている。

オフィス業務は、ITやAIのおかげで自動化が進んでいるとはいえ、まだまだ単純作業が数多く残っている。例えばアプリ間でデータを移動する際に、データのコピー、ペーストを何度も繰り返さなければならないことがある。こうした繰り返し作業をAIが学んで自動化してくれるツールが、ロボティック・プロセス・オートメーションだ。

Forresterによると、市場の規模はそれほど大きくないが、既に拡大期に入っており、しばらくはゆるやかな成長が見込まれるという。

■音声認識

画像認識の急速な精度向上を追いかけるかのように精度を向上させているのが、ディープラーニングを使った音声認識技術。

昨年9月に、米Microsoftの研究所が音声認識のエラー率を6.3%にまで下げて研究者の注目を集めたが、翌月の10月には「エラー率がさらに5.9%にまで下がった」と発表。その急速な精度向上に、業界が衝撃を受けている。

プロの速記者でも5%ぐらいの間違いをすると言われている。今年中にAIによる音声認識の精度が人間を超えるのは、ほぼ確実と言っていいと思う。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ドル156円台へ急上昇、日銀会合後に円安加速 34

ビジネス

日銀、政策金利の据え置き決定 国債買い入れも3月会

ワールド

米、ネット中立性規則が復活 平等なアクセス提供義務

ワールド

ガザ北部「飢餓が迫っている」、国連が支援物資の搬入
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story