
ベトナムと日本人
ベトナムの送り出し機関で「ブローカー不在」が広がらない理由 ─ なぜ構造は変わらず、一部の送出し機関だけが実現できるのか?
ベトナムの送出し機関で「ブローカー不在」が広がらない理由はなぜか?
この問題について紐解いていきます。
深く根付いた「地域ネットワーク依存」の構造
ベトナムの人材送り出し産業には、長年ブローカーと呼ばれる中間仲介者が存在してきた。制度上は必要ないが、地方の村や職業訓練校に張り巡らされた口コミネットワークが、応募者がブローカー頼りになる流れを作ってきた。
都市部の若者はSNSで直接応募できても、送り出しの中心は今も地方だ。ここでは制度の説明よりも「知っている誰かの言葉」が優先され、ブローカーはコミュニティの橋渡し役として機能した。これがいまだにブローカーに高額な費用をかけても頼ってしまう理由なのだ。しかしブローカーを使わない送り出し機関がホーチミン市にある。
ブローカーに依存せざるを得ない「送り出し機関の現実」
ブローカー不在を目指すには、地方での説明会、家族訪問、応募者管理、寮生活のケアまですべてを自社で担う必要がある。
しかし多くの送り出し機関は人手も予算も限られ、ブローカー網は「早く、多く集められる仕組み」として魅力的だ。結果として、構造全体を変えようとするインセンティブが働きにくくなるのだ。
応募者側に残る「情報格差」という壁
近年は都市化が進んだものの、日本の制度、費用比較、生活リスクまで正確に理解できる若者はまだ限られる。
本来、送り出し機関が担うはずの「丁寧な説明」の役割をブローカーが肩代わりし、説明が不正確であっても家族は「知り合いの声」を優先してしまう。こうしてブローカー文化は構造的に温存されてしまうのだ。
それでも「ブローカー不在」を実現する送出し機関がある
「ブローカーを使わない!」それは理念ではなく、地味で重い取り組みの積み上げによって成立している。
一つは日本企業との「長期協働」。定期的に必ず実習生を募集し、候補者の生活支援や適正選考を重視する受け入れ企業と組むことが大切だ。
二つ目は「完全な透明性」だ。費用、制度、生活リスクまで正直に伝えると、短期的には学生の応募が減る。しかし長期的には口コミが広がり、誠実さが信頼を積み上げる。この「時間のかかる透明性」こそ、ブローカー依存を減らす唯一の道である。
三つ目は家族との「直接対話」を避けないことだ。ベトナムでは、送り出しの意思決定者は本人よりも家族であることが多い。制度の説明、生活不安、リスクについての質問に自社で応えるには大きな人的コストがかかる。
これを省略せず、地道に対応できる送出し機関だけがブローカー不在を維持できる。
ホーチミン市のアクルヒJVのように企業と直接プログラムを構築し、学生の家族と対話しながら信用を得て直接募集し、採用後の生活支援まで含めて運営する例が見られる。こうした関係があれば、ブローカーを使う必要がない採用が可能になるのだ。
結論 ─ ブローカー不在型は理念ではなく「総合力」
結局、ブローカー不在型の送り出し機関は理念だけでは成立しない。
地方ネットワークがあること、透明性、日本企業との協働、家族対応、日本側のフォローアップ―これらすべてが揃った時に初めて成立する。
だからこそ、多くの送出し機関には実現不可能で、実現できる組織が限られているのが現実だ。ベトナム人を採用する企業にはブローカーを使わない送り出し機関を選択して頂きたい。

- ヨシヒロミウラ
ベトナム在住。北海道出身。武蔵大学経済学部経営学科卒業。専攻はマーケティング。2017年に国際交流基金日本語パートナーズとしてハノイに派遣。ベトナムの人々と文化に魅了され現在まで在住。現在進行形のベトナム事情を執筆。日本製品輸入商社と人材紹介会社に勤務。個人ブログ: ベトナムとカンボジアと日本人 X: @ihiro_x Threads: ihiro_x






















































