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イタリア事情斜め読み

ヴィズマーラ恵子|イタリア

伊独二国間会談から見える、欧州現実主義と日本の岐路

イタリア政府・首相府(閣僚評議会総理府)公式サイトよりlicenza CC-BY-NC-SA 3.0 IT、メローニ首相の2026年1月23日、ドイツ連邦共和国のフリードリヒ・メルツ首相(連邦首相)と会談、

| メローニとドイツ保守勢力が示す「戦略的自立」の意味

イタリアのジョルジャ・メローニ首相とドイツの保守勢力が打ち出す「戦略的自立」は、日本で今、最も注目される外交・安全保障論である。この主張の核心は、理想論やイデオロギーに流されず、国益・産業・安全保障を最優先にする現実主義にある。欧州でさえ多国間主義や脱炭素至上主義が揺らぎ始める中、メローニ首相の自立論は、日本の高市早苗首相が長年主張してきた路線と驚くほど一致している。現実の国際情勢や経済リスクを直視し、国家としての自前能力を確保する姿勢が、両者の政策を貫いている。

経済安全保障で一致する日伊の戦略

両者の最大の接点は経済と安全保障の一体化である。イタリアは中国依存からの脱却を進め、重要物資やインフラのサプライチェーンを国内に回帰させる政策を推進している。高市首相も「重要物資の国内生産能力を2030年までに大幅に強化する」と掲げ、半導体・医薬品・レアアースなど特定重要物資の国内比率を50%以上に引き上げる目標を具体的に示した。経済安全保障推進法(2022年成立)により、外国投資規制の強化やサプライチェーン強靭化のための補助金制度を創設した点も、イタリアの政策と完全に重なっている。

エネルギー政策における現実主義も一致する。イタリアは脱炭素政策を否定しないが、産業や雇用を破壊する極端な脱炭素至上主義には反対する。高市首相は「脱炭素を理由に国力を削ぐのは本末転倒」と明言し、原子力発電の再稼働や新増設を推進して2030年までに原子力比率を20~22%に引き上げる目標を掲げている。イタリアも2025年に小型モジュール炉(SMR)導入計画を発表し、2035年までに原子力比率を10%以上に引き上げるロードマップを策定した。また、天然ガスのロシア依存を脱却するため、アルジェリアやアゼルバイジャンとの長期供給契約を拡大した。こうしたエネルギー現実論は、産業維持と国民生活の安定を重視する点で高市首相の考えと完全に一致している。

同盟と自立のバランス

同盟関係の扱いにも共通点がある。イタリアとドイツはNATOやEUを維持しつつ、過度な依存を避ける姿勢を取る。高市首相も日米同盟を重視しながら、自前能力の不可欠性を強調し、従属ではなく対等な同盟を求める。防衛費GDP比2%達成のロードマップを早期に策定し、敵基地攻撃能力を明確に保持する点も一致する。イタリアは防衛費をGDP比2%以上に引き上げ、防衛産業強化に投資する方針を明確に打ち出している。これは軍事費増額ではなく、国家としての自立性を高め、外交交渉力を強化する戦略的選択である。

移民政策でも現実主義が顕著である。メローニ首相は2023年、アルバニア政府と協力し、アルバニア領内にイタリア管理の移民処理・収容センターを設置した。違法移民の審査・送還を迅速化し、2025年までに年間送還数を前年の2倍以上に増加させた。高市首相も国家の持続性を重視し、現実的な国境管理を重視する姿勢を示す。国家としての秩序を維持し、社会的負担を抑える政策は、理念よりも現実を優先するアプローチの象徴である。

| 若い世代が求める「厳しい現実を見ている大人」

若い世代の反応は驚異的である。10代・20代は理念だけの国際協調や実効性のない理想政治に直感的な違和感を抱いている。メローニ首相が「責任・現実・国力」、高市首相が「覚悟」「国家としての持続性」を語る姿に、日本の若い世代は「ちゃんと厳しい現実を見ている大人」の姿を見出している。高市首相は若年層からの支持が強く、日本国内のSNSでは「メローニやドイツ保守派と同じ現実主義路線を高市首相が示している」「高市路線こそ日本の正解」との声が広がり、現実主義外交への共感が日本の若い世代を中心に拡散している。

総選挙が示す日本の選択肢

高市首相が国会を解散し、総選挙に向けて動き出した今、若い世代が見るべきポイントは明確である。まず、各政党が「国家としての自立」と「現実的な経済安全保障」にどこまで本気で取り組むのかである。半導体やレアアース、医薬品といった重要物資の国内生産能力強化に、具体的な予算配置と実行計画があるのか。原子力やエネルギー政策で、理想と現実のバランスを取ろうとしているのか。防衛費増額が単なる数字合わせではなく、自前能力強化に結びついているのかを問うべきだ。

次に、外交姿勢である。日米同盟を重視しながらも、対等性を求める政党があるのか。中国依存を減らしながら、経済関係を現実的に管理できるビジョンを示しているのか。Quad、IPEF、日伊パートナーシップといった複層的な枠組みを活用し、単一国への依存を避ける戦略があるのか。

さらに、国内政治の現実性。移民・労働力不足、高齢化、地方衰退といった課題に、理想論ではなく現実的な対策を打ち出しているのか。欧州で現実主義が台頭する中、日本だけが過去の枠組みに固執することはできない。

| 日本が採るべき選択肢

日本は今、大きな岐路に立っている。欧州が現実主義的自立へ移行する中、日本だけが旧来の枠組みに固執するのか。それとも国益最優先の外交へ転換するのか。経済、安全保障、エネルギー、移民、同盟関係のすべてにおいて現実主義を貫くメローニ政権の具体策は、日本に明確な問いを投げかけている。

答えは、若い世代の声が示す方向にある。国家としての持続性と自前能力を重視する外交戦略こそ、これからの日本が採るべき選択肢である。現実を直視し、国益を最優先する姿勢は、理想論に流されない強い国家を形成する基盤となる。総選挙は、その選択を具体的に示す機会なのだ。

 

Profile

著者プロフィール
ヴィズマーラ恵子

イタリア・ミラノ郊外在住。イタリア抹茶ストアと日本茶舗を経営・代表取締役社長。和⇄伊語逐次通訳・翻訳・コーディネータガイド。福岡県出身。中学校美術科教師を経て2000年に渡伊。フィレンツェ留学後ミラノに移住。イタリアの最新ニュースを斜め読みし、在住邦人の目線で現地から生の声を綴る。
Twitter:@vismoglie

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