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日本人コーヒー生産者が語るコロンビア

松尾彩香|コロンビア

コロンビア唯一のメトロがある街メデジンと市民の溢れんばかりのメトロ愛

©️iStock - Luis Echeverri Urrea

コロンビア第二の都市メデジン。この街にはコロンビア唯一のメトロ(旅客列車)が走っています。常に首都ボゴタにライバル心を燃やしているメデジンの人にとって、メトロはこの街の誇り。「ボゴタよりも栄えている」「メトロが走っているメデジンこそがコロンビア1の街だ」と、みんなメトロをとても大切にしているんです。多くの人にとって生まれ育った街は特別な場所ですし、「うちの街のここは他の街に負けない!」と思える部分はあるものだとは思いますが、メデジン出身者のメトロに対する愛は想像を超えていて時に感心してしまうほどのものなので、今日は「メデジン市民のメトロ愛」に関するエピソードをいくつかここで紹介したいと思います。

 

1、飲食絶対禁止!車内はきれいに!

メデジンのメトロでは車内での飲食は禁止されています。いつも何かしら食べながら歩いているようなメデジンの人々ですが、メトロの中では水すら飲みませんし、車内やホームにはゴミひとつ落ちていません。またお酒に酔っている状態でメトロに乗ることはできないので、日本のように座席で寝ている酔っ払いを見かけることもメデジンではないのです。改札口やホームに常に警察がいるということもありますが、利用者たちがみなメデジンの誇りであるメトロを美しく保ちたいという気持ちがあるというのは間違いないでしょう。メデジン在住のインフルエンサーがメデジンの街を紹介する際に「メデジンの人はメトロを大切にしているので敬意を払ってくださいね」とお願いをすることは珍しくないこと。メトロ内で飲食をしていると、他の利用客に動画や写真に収められSNSで拡散されることもあるのでメデジンを訪れる方は気をつけてくださいね。

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©️YouTube - [4K] Walking Medellín, Colombia. (SITVA) Sist. Integrado de Transporte Masivo del Valle de Aburrá

 

2、破壊行為もメトロは対象外

2021年5月にコロンビア全土で行われた反政府デモでは、大きな都市を中心にデモ隊の一部が暴徒化し至るところで破壊行為が行われました。首都ボゴタでは路線バスや停留所が次々と破壊され運行ができない状態に。メデジンも例外ではなく一部のメトロの駅でガラスが割られるなどの被害を受けました。しかしこのニュースに対して「この破壊行為を行ったのはメデジンの人ではない。メデジン市民がメトロを傷つけるわけない。」というコメントが複数残されたのです。メデジン市民のメトロ愛を肌で感じている私はこれらのコメントを見て「確かにメデジンの人がメトロを壊している姿は想像できない」と何の根拠もなくうなずいてしまったのでした。また、隙間さえあればグラフィティなどの落書きが残されるメデジンですが、メトロの車体にはペンキの跡は一切見られません。メデジンのシンボルであるメトロは市民によって見張られ、大切に守られているのです。

スクリーンショット 2023-02-10 午後2.03.45.png

©️YouTube -El METRO de Medellín [Mientras todo pasa] Telemedellín

 

3、メデジンドラマではメトロをアピール

メデジンを舞台に撮影された「La Reina del Flow」は、過去にイザコザがあった2人のレゲトン歌手を主人公にストーリーが展開されるスペイン語圏でとても人気のドラマです。このドラマの中で主人公であるジェイミーが新曲をリリースし大ヒットするという場面があるのですが、その曲のミュージックビデオが全てメデジンのメトロで撮影されており、メデジンのシンボルをこれでもかとアピールしているのです。歌詞は「あなたのことが頭から離れない」といった感じのメトロもメデジンも全く関係ない内容のものなのですが、もはやミュージックビデオなのかメトロのプロモーションビデオなのか混乱してしまうほどの出来で思わず笑ってしまいました。みなさんもぜひチェックしてみてください。

 

ライバルボゴタで進むメトロ建設計画

メトロの有無でメデジンに引けをとっている(?)首都ボゴタですが、実はボゴタにメトロを建設する計画は50年以上前から何度かありました。しかしなかなか実現までたどり着くことができず現在に至っています。770万人もの市民を抱えている都市にもかかわらず公共交通機関が充実していないという事実が市民の生活に影響を与えていることは明らかで、ボゴタの渋滞は世界で6番目にひどいというデータもあるほど(年間122時間を渋滞に奪われているのだそう)。もしボゴタにメトロが開通すればこれらの渋滞が緩和されたり、移動のしやすさから働きに行きやすくなることで失業率低下に繋がるなどのメリットがあると言われています。

現在、この50年越しのボゴタ市民の夢を実現させようとしているのはクラウディア・ロペス市長。彼女のリードによって実際に線路を建設する工事がスタートし、本格的にボゴタメトロ開通に向けて動き出しました。周りから批判の声を受けながらも何とかここまでこぎつけたボゴタメトロ計画ですが、毎度のことながらスムーズに話が進むことはなく今新たな壁にぶち当たっています。それは去年8月に就任したペトロ大統領がボゴタ初の電車は高架電車ではなく地下鉄がいいと言い出したこと。高架電車であれば5年後開通、地下鉄となるとそれに加えてさらに6年かかると言われており、ボゴタは現在この2つの意見の間で揺れている状態です。「ボゴタにはメトロがないくせに」と散々メデジン市民から煽られてきたボゴタですが、コロンビアで2つ目のメトロとなるのか、それともコロンビアで唯一の地下鉄の誕生となるのか、遠くからのんびりと動向を見守っていこうと思います。

 

Profile

著者プロフィール
松尾彩香

コーヒー農家を営む元OL。コーヒーを栽培する一方で、コーヒー農家の貧困や後継者不足問題、コロンビアでの生活についてSNSを通じて発信。朝の一杯のコーヒーに潜む裏話から、日本ではあまり報じられないコロンビアの情勢まで幅広くお伝えします。2022年7月よりスペイン在住

ブログ: http://campesinita.com

Twitter: @maon_maon_maon

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