World Voice

England Swings!

ラッシャー貴子|イギリス

脚光を浴びる日本文学の人気翻訳家、ポリー・バートン

さて、話を先日の書店でのイベントに戻すと、柴崎友香とポリーの対談では、古いものへの興味は、誰かが作った、誰かが使ったという他者の存在を想像するから、という柴崎の言葉が強く印象に残った。ポリーは、幅広くあれこれ読んでいる柴崎が書くものは純粋に驚かされることが多く、とてもユニーク、などと話した。

柴崎とポリーは、2021年に英国文芸翻訳センターの同じ翻訳ワークショップに参加し、ブログも一緒に書いているし、柴崎の『百年と一日』もポリーが訳すなど、気心の知れた仲なのだろう。敬意を払い合うふたりの関係が見えるようで、ほのぼのする時間でもあった。

対談後のサイン会では、わたしもふたりからサインをもらった。主催者によればいつもより行列が長かったそうで、ポリーと長く話し込む人も多かった。柴崎友香に自分の感想を伝えられたことは嬉しい経験だったけれど、ポリーとの再会にはちょっと舞い上がって、「覚えてます?」となれなれしく話しかけてしまった。ちなみに日本語で。ポリーの日本語は日本人とほぼ変わらないのだ。前に会った事情を話すと、「ああ」という顔になって親しげに微笑んでくれ、少しおしゃべりをした後、サインに「また会えて嬉しい」と添えてくれた。

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ポリーの著書3冊。左が今回サインしてもらったFifty Sounds、右は2冊目のPorn: An Oral History。真ん中はなぜか4月の刊行前に書店に置かれていて勇んでゲットした初の小説What Am I, A Deer?。筆者撮影

ポリーが本当にわたしを覚えていたかどうかはわからない。もし覚えていてくれたなら大喜びだし、そうでなかったとしても、「また会えて嬉しい」と書いてくれるなんてやさしい人だもの。

翻訳家としても作家としてもますます期待されているポリー。3月12日に発売された柚木麻子の『ナイルパーチの女子会』の英訳Hookedは、その週のサンデータイムズベストセラー・ランキング位に4月9日には自身初の小説What am I, A Deer?も刊行される(すでに発売していた書店では、「上質フィクション」として平積みされていた!)。こちらもとても楽しみだ。

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独立系の書店South Kensington BooksでHooked(『ナイルパーチの女子会』)を買ったら表紙のイラストをプリントしたかわいいトートバッグがもらえた。右は黒板に手書きされた宣伝ボード。筆者撮影

<敬称略>

さて、お世話になったこのニューズウィーク日本版World Voiceのブログは今回で最後になります。コロナ禍真っ只中に始まり、ロンドンでの経験をお伝えしてきましたが、わたし自身も考えを深めるきっかけになり、毎回がよい勉強でした。お読みいただき、ありがとうございました。

渡英20年を迎えてもわたしの日常は驚きと発見の連続で、ロンドンへの興味は尽きません。そんな暮らしをお伝えできたら、と思います。またどこかでお会いしましょう。

 

Profile

著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

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