
England Swings!
脚光を浴びる日本文学の人気翻訳家、ポリー・バートン
ポリー・バートンはケンブリッジ大学で哲学を学んだ後、日本語をほとんど知らないままJETプログラムの英語教師として佐渡に派遣された。日本語の勉強を始めた彼女は、その後ロンドン大学東洋アフリカ学院で翻訳で修士号を取得。企業で社内翻訳に携わりながら文芸翻訳家をめざし、2011年、日本の第1回JLPPコンクール(現・文化庁翻訳コンクール)で最優秀賞を受賞した。さらにクリエイティブライティングの名門校、イーストアングリア大学の英国文芸翻訳センターの翻訳ワークショップでも学んでいる。このワークショップは、竹森ジニー、モーガン・ジャイルズ、米田雅早など現在活躍する翻訳家を多く輩出しており、ポリーはその後は教える側にも立っている。これまで合わせて6年ほど日本に滞在した彼女は、英国と行ったり来たりしながら文芸翻訳家としての道を歩んできた。

ここで突然ちょっと自慢をすると、わたしはポリーに何度か会ったことがある。ふふふふふ。
最初は2020年1月、わたしが所属する日英通訳者翻訳者の団体J-Netのワークショップにポリーをスピーカーとして招いた時だ。彼女が文芸翻訳家になるまでの道のりを聞きながら、穏やかそうなポリーが文芸翻訳を熱く追求した姿に感激した。「こんな話で参考になります?」と照れたように話す様子もチャーミングで、この時すっかりファンになってしまった。
その翌月、わたしは英国文芸翻訳センターのワークショップに参加した(ポリーが学んだプログラムとは異なる講義中心のもの)。そしてそこにもポリーがいたのだ。講師のひとりとして。
日本語と英語の翻訳を考えるこのワークショップには、ポリーのほか、詩人・作家の伊藤比呂美、伊藤の作品の英訳を担当するアメリカのジェフリー・アングルス、そして当時、英国文芸翻訳センターにレジデントとして滞在していた柴田元幸という豪華な講師陣が揃っていた。受講者も既に実績のある翻訳者が多く、わたしは緊張しまくっていたのだけれど、30人くらいの集まりということもあって、なごやかな雰囲気に包まれていた。
関係者だった友人のご厚意で夕食会にも呼んでいただき、ポリーをはじめ、みなさんと親しく過ごした。日英での異文化体験や翻訳、研究の話などを、日本語と英語を交えて真面目に愉快に聴くことができて、忘れられない楽しい夜だった。
この時ポリーが、なぜか東京より大阪の方が肌に合うんだよね、なんて言いながら、自分が訳した松田青子の『おばちゃんたちのいるところ』や津村記久子の『この世にたやすい職業はない』がどんなに面白いかを静かに熱く語っていたので、わたしも家に帰ってすぐ読んだ。面白かった!

その翌週、ロンドンの大英図書館の大ホールでポリーにまた会った。そこで、当時国際交流基金が毎年開催していたJapan Nowという日本文化を紹介するイベントが開催されていた。わたしが受けたワークショップも実はその一環で、日本から招かれ、英国各地を訪れていた作家や文化人たちが一堂に会したのがこの日だったのだ。
この年は映画監督の信友直子、作家の本谷有希子、小山田浩子、森見登美彦、写真家の澤田知子などが登壇。2017年に柴崎友香と登壇したポリーは、この時は客席で講演を聴いていて、1日がかりのイベントの合間に何度か顔を合わせて話をした。コロナウイルスが猛威をふるい始めた時期で、予定していた日本行きを中止すべきかという共通の悩みがあり、不安な気持ちを彼女と分かち合えて心強かったことを覚えている。
その後コロナ禍に入ってから、ポリーは着々と翻訳と創作を発表し続けた。『BUTTER』が大ベストセラーになったことでますます有名人になっていく彼女を、わたしはファンとして嬉しく見守っていた。

- ラッシャー貴子
ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。
ブログ:ロンドン 2人暮らし
Twitter:@lonlonsmile





















































