コラム

魯迅なら今の日中関係をどう見るか

2024年12月12日(木)18時00分
周来友(しゅう・らいゆう)(経営者、ジャーナリスト)

魯迅には仙台留学中、文学を志すようになるきっかけがあった。中国人がロシア軍スパイとして日本軍に処刑されるスライドを見て、そこに映る周りの中国人が何の反応も見せなかったことに衝撃を受けたのだ。医学では国民を覚醒させることはできない、それができるのは文学だ──そう考えるようになり、文学への転向を決意した。

もっとも、転向の理由はもう一つあったらしい。東北大学の研究者によれば、難しい日本語での講義に加え、医学用語のドイツ語が足を引っ張り、授業についていけなくなったのだろうという。


為政者にこびず、相手が誰であっても道義を外れた者は容赦なく批判

中国を代表する文人・思想家はこうして誕生した。その後、魯迅は55歳で没するが、反国民党で立場を同じくしていた毛沢東にも称賛され、死後は民族的英雄として祭り上げられた。

ただ、毛自身も魯迅の本質を理解はしていたようだ。「もし魯迅が今も生きていたら?」と問われた毛はこう答えたという。「黙っているか、牢屋に入って書いているかのどちらかだろう」

魯迅の素晴らしさは、為政者にこびず、相手が誰であっても道義を外れた者は容赦なく批判するその精神性にある。

今回の式典には仙台市長や中国大使館の参事官、日中友好協会の代表らが出席していたが、現在の厳しい日中関係から目を背け、東北4県と中国との友好エピソードばかり披露されていたので、違和感を覚えた。仙台市は魯迅記念公園を造ろうとしたり、パンダの誘致を進めようとしているし、中国側は中国側で大使館を通じて友好団体ばかりを集めたイベントを開いている。そんな心地いいだけの活動をしている場合だろうか。

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