最新記事
BOOKS

和歌山カレー事件 死刑囚の母と子どもたちの往復書簡に見た「普通の家族」

2025年9月26日(金)19時00分
印南敦史(作家、書評家)

「日本中、ママが死刑になるのは当たり前と思っている」

なお、この時期には別の拘置所にいた夫の健治(カレー事件後、詐欺罪で懲役6年の実刑判決を受けた)も、同じ放送を聞いていたようだ。


『毎日、暑い日が続いているが、みんな元気か?
 七月一五日の土曜日、ABCラジオにママの好きな「シルエット・ロマンス」の歌を誕生日祝いにリクエストしなかったか? 祥子、優子、誠一、さっちゃんと言っていたので、アレ、家の子供と一緒の名前だなあと部屋のラジオで聞いていた。(後略)』(平成12年8月 健治が優子へ宛てたメッセージより)

こうしたやりとりから見えてくるのは、ごくごく普通の家族の関係性だ。やりとりの中からは、必要以上に報道が肥大化していく状況下にあっても、一致団結して乗り越えていこうという家族全員の思いをはっきりと読み取れる。

だが子どもが成長し、各人の価値観が多様化していくと、「仲のいい家族」の関係性も綻び始める。悲しいことに、書簡の文体からもそれが分かる。


 優子と私が働かないってのはなぜか知ってる? 店に事件のことが知れたらすぐクビになるんだよ。毎回それの繰り返し。
 私達四人はママが死刑になるなんておかしい、と思ってる。でも日本中、私達を除いた人達はママが死刑になるのは当たり前と思っている。それが現実だよ。現実からママは逃げてるだけ。死刑って最後の判決聞くの怖い? 私達も怖いよ。どんだけムカついて腹たっても実の親だもん。怖いよ。これが本音。私たち四人は今も、これからもママは事件と関わりなし! と信じていくよ。わたし達四人以外はムリ!(平成17年5月21日 祥子が著者へ宛てたメッセージより)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米1月CPI、前年比2.4%上昇 伸び鈍化し予想も

ワールド

米・ロ・ウクライナ、17日にスイスで和平協議

ワールド

米中外相、ミュンヘンで会談 トランプ氏の訪中控え

ビジネス

EU貿易黒字が縮小、米関税と中国の攻勢が響く
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベルの「若見え」な女性の写真にSNS震撼
  • 4
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 7
    あなたの隣に「軍事用ヒト型ロボット」が来る日
  • 8
    「ショックすぎる...」眉毛サロンで「衝撃的な大失敗…
  • 9
    毛沢東への回帰? それとも進化? 終身支配へ突き…
  • 10
    「ドルも弱い」なのになぜ、円安が進む? 「ドル以外…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 10
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中