最新記事
BOOKS

和歌山カレー事件 死刑囚の母と子どもたちの往復書簡に見た「普通の家族」

2025年9月26日(金)19時00分
印南敦史(作家、書評家)

「涙が止まらなかった。プレゼント、ありがとうね」

夫の健治、母親の代わりに家族を支えようとする長女の祥子、明るさと前向きさが持ち味の次女・優子、現在も母親を支持し続ける長男の誠一、まだ幼かった三女の幸子(子どもたちはいずれも仮名)、それぞれ文体にも明らかな違いがあるため、個性の違いも確認できることだろう。


なんだか、とっても深い深いおとし穴にはまってしまい、ママはどう脱出できるのか、考えれば考えるほどイヤです。四人の人生に大きく影響しちゃうね。でも、ママは本当に四人の強さには驚くよ。家にいてた時も、今もあれだけのマスコミ報道にもめげず、さすがだヨ! 強い子だ四人は。(平成11年5月30日 眞須美が祥子へ宛てたメッセージより)

タイトルにもなっている「シルエット・ロマンス」は、1982年にヒットした大橋純子によるヒット曲。著者は平成11年9月16日、次女の優子に宛てたメッセージの中でこの曲について「ママは最近、優子の知らない古い曲の『シルエット・ロマンス』をよく歌っています。リズムがいいし、途中転調するところがまた...」と、お気に入りであることを記している。

そして翌年の平成12年7月15日、著者は図らずもラジオでこの曲を聴くことになる。


●七月一五日。朝起きてボウっとしてたの。九時に和歌山城のチャイムが聞こえてきた。四人は学校だわ、と思い考えていました。九時四五分〜室内体操。一〇時〜ラジオが始まり、ずっと聞いていました。一一時すぎ、「リクエストの最後の曲です。なんとも切ないお手紙が届きました」といった時、ママはピンときて...、
「三九才のお誕生日は二二日、来週なのですが、このようなお手紙、リクエストは一日も早くかけたいと思い、今日かけます。ママの名前は書いてませんね。いつも一〇時から聞いているということなので、きっと今、聞いていてくれるでしょう。"シルエット・ロマンス"...」
"恋する女は夢見たがりの、いつもヒロイン、つかのまの..."
 曲が終ると「この曲、とてもいいんですよね」といって、「ママへ、ショウチャン、ユウチャン、セイくん、サッチャンより」って。
 涙が止まらなかった。三九才のHappy Birthdayプレゼント、今日届きました。ありがとうね。(平成12年7月15日 眞須美が祥子へ宛てたメッセージより)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米・ロ・ウクライナ、17日にスイスで和平協議

ワールド

米中外相、ミュンヘンで会談 トランプ氏の訪中控え

ビジネス

EU貿易黒字が縮小、米関税と中国の攻勢が響く

ビジネス

欧州証券市場監督機構、資産運用大手を監督すべき=E
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベルの「若見え」な女性の写真にSNS震撼
  • 4
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    あなたの隣に「軍事用ヒト型ロボット」が来る日
  • 7
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 8
    「ショックすぎる...」眉毛サロンで「衝撃的な大失敗…
  • 9
    「ドルも弱い」なのになぜ、円安が進む? 「ドル以外…
  • 10
    毛沢東への回帰? それとも進化? 終身支配へ突き…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 10
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中