和歌山カレー事件 死刑囚の母と子どもたちの往復書簡に見た「普通の家族」
「涙が止まらなかった。プレゼント、ありがとうね」
夫の健治、母親の代わりに家族を支えようとする長女の祥子、明るさと前向きさが持ち味の次女・優子、現在も母親を支持し続ける長男の誠一、まだ幼かった三女の幸子(子どもたちはいずれも仮名)、それぞれ文体にも明らかな違いがあるため、個性の違いも確認できることだろう。
なんだか、とっても深い深いおとし穴にはまってしまい、ママはどう脱出できるのか、考えれば考えるほどイヤです。四人の人生に大きく影響しちゃうね。でも、ママは本当に四人の強さには驚くよ。家にいてた時も、今もあれだけのマスコミ報道にもめげず、さすがだヨ! 強い子だ四人は。(平成11年5月30日 眞須美が祥子へ宛てたメッセージより)
タイトルにもなっている「シルエット・ロマンス」は、1982年にヒットした大橋純子によるヒット曲。著者は平成11年9月16日、次女の優子に宛てたメッセージの中でこの曲について「ママは最近、優子の知らない古い曲の『シルエット・ロマンス』をよく歌っています。リズムがいいし、途中転調するところがまた...」と、お気に入りであることを記している。
そして翌年の平成12年7月15日、著者は図らずもラジオでこの曲を聴くことになる。
●七月一五日。朝起きてボウっとしてたの。九時に和歌山城のチャイムが聞こえてきた。四人は学校だわ、と思い考えていました。九時四五分〜室内体操。一〇時〜ラジオが始まり、ずっと聞いていました。一一時すぎ、「リクエストの最後の曲です。なんとも切ないお手紙が届きました」といった時、ママはピンときて...、
「三九才のお誕生日は二二日、来週なのですが、このようなお手紙、リクエストは一日も早くかけたいと思い、今日かけます。ママの名前は書いてませんね。いつも一〇時から聞いているということなので、きっと今、聞いていてくれるでしょう。"シルエット・ロマンス"...」
"恋する女は夢見たがりの、いつもヒロイン、つかのまの..."
曲が終ると「この曲、とてもいいんですよね」といって、「ママへ、ショウチャン、ユウチャン、セイくん、サッチャンより」って。
涙が止まらなかった。三九才のHappy Birthdayプレゼント、今日届きました。ありがとうね。(平成12年7月15日 眞須美が祥子へ宛てたメッセージより)





