最新記事
考古学

キリストを包んだとされる「聖骸布」はやはり偽物だった?...中世の時点で既に告発されていた

Discovery Reveals We've Been Debunking the Shroud of Turin for 650 Years

2025年9月4日(木)18時35分
マリア・アズーラ・ボルペ

科学的にも否定されつつあるが、今なお信じている人も

サルゾーによれば、オレームは1350年代に学者および王の顧問として仕えていた際、リレーでの詐欺について知った。聖骸布は1355年頃までリレーで展示されていたが、俳優を雇ってまで奇跡を演出していたことが発覚したため、トロワの司教によって撤去が命じられていた。

その後、聖骸布は数十年姿を消した。教皇クレメンス7世が再び聖骸布の展示を許可した際には、「本物」ではなく「模造」であることを明記することを条件としていた。


聖骸布は1389年、ダルシがクレメンス7世宛てに送った覚書において正式に偽物と宣言された。この中でダルシはフランス王シャルル6世に対しても「人工的に描かれた、作り物の布」であるとして今後、展示しないように求めていた。

サルゾーは「この聖骸布は、中世における偽造聖遺物として最も多くの記録が残されている事例だ。そして、教会と聖職者自身によってその崇拝が非難され、阻止された数少ない例のひとつでもある」と指摘する。

聖骸布には、裸体の男性の正面および背面の痕跡が薄く残されており、磔刑後のイエスの伝統的な描写に一致する。長年にわたって論争が繰り広げられてきたが、今なお多くの人々が本物だと信じ続けている。

過去に行われた放射性炭素年代測定では、この布の起源は13世紀末から14世紀にかけてのものであるとされた。最近では7月に『アーキオメトリ―(Archaeometry)』誌で発表された3D分析によって、布がイエスの遺体ではなく彫像に巻き付けられていた可能性が高いとの結論が示されている。

トリノ大学のキリスト教史および教会史の教授であり、聖骸布研究の第一人者であるアンドレア・ニコロッティ教授は、今回発見された文書について「中世ではすでに、聖骸布が本物ではないと認識されていたことを示す、さらなる歴史的証拠だ」と述べた。

「オレームの見解が重要なのは、彼がこの論争に直接関与しておらず、自らの立場を正当化する必要のある利害関係者ではなかった点だ」

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

逮捕475人で大半が韓国籍、米で建設中の現代自工場

ワールド

FRB議長候補、ハセット・ウォーシュ・ウォーラーの

ワールド

アングル:雇用激減するメキシコ国境の町、トランプ関

ビジネス

米国株式市場=小幅安、景気先行き懸念が重し 利下げ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 3
    眠らないと脳にゴミがたまる...「脳を守る」3つの習慣とは?
  • 4
    「稼げる」はずの豪ワーホリで搾取される日本人..給…
  • 5
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 6
    ロシア航空戦力の脆弱性が浮き彫りに...ウクライナ軍…
  • 7
    「ディズニー映画そのまま...」まさかの動物の友情を…
  • 8
    ハイカーグループに向かってクマ猛ダッシュ、砂塵舞…
  • 9
    金価格が過去最高を更新、「異例の急騰」招いた要因…
  • 10
    今なぜ「腹斜筋」なのか?...ブルース・リーのような…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 3
    眠らないと脳にゴミがたまる...「脳を守る」3つの習慣とは?
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 6
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 7
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接…
  • 8
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨッ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にす…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中