最新記事
考古学

古代エジプト神話に潜む「天の川の暗黒帯」...新発見が示す宇宙と神話の意外な関係

Milky Way's 'Dark River' Discovered in Ancient Egyptian Art

2025年6月6日(金)16時10分
イアン・ランドール
ヌトは古代エジプト神話の天空の女神だ

ヌトは古代エジプト神話の天空の女神だ The Gods of the Egyptians Vol. II, colour plate facing page 96 Public Domain

<高度な天文学的知識を持っていたことで知られる古代エジプト人。天空の女神に描かれた「暗黒帯」が神話と宇宙の関係を紐解くきっかけになるかも>

古代エジプトの天空の女神ヌトの身体に描かれた1本の黒い曲線が、天文学的現象である「グレート・リフト」(天の川を縦断する暗黒帯)を表現している可能性がある。

イギリスのポーツマス大学の天体物理学者、オル・グラウル教授は、3000年前に制作された棺に刻まれた、類を見ないこのデザインに注目し、宇宙とエジプト神話の関係に新たな視座を提供した。


古代エジプト神話では、女神ヌトは空そのものとされる存在であり、大地の神ゲブを覆うように弓なりの姿で描かれてきた。これまでの図像では、その裸の体に星々や太陽がちりばめられて描かれ、長らく「天の川」を象徴するものと考えられてきた。

だが、ネシタウジャタケトと呼ばれる女性の3000年前の棺に描かれたヌトには、従来の図像には見られない、ヌトの足の先から指の先まで滑らかに身体を貫いている一本の黒い曲線が加えられていた。

【動画】ネシタウジャタケトの棺

グラウルは、これはグレート・リフトを視覚的に再現したものだと推定している。彼は『Journal of Astronomical History and Heritage』誌に発表した研究の中で、5000年前からのものも含む555体の棺に描かれたヌトの図像を徹底的に比較・分析し、「この波打つ曲線は天の川とグレート・リフトを描写していると考えられる」とした。その上で、その類似性が「際立っている」と付け加えた。

編集部よりお知らせ
ニューズウィーク日本版「SDGsアワード2025」
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米ADP民間雇用、7月は10.4万人増 予想上回る

ワールド

中国政治局会議、経済支援へ 無秩序な競争取り締まり

ビジネス

日産、4━9月期は営業赤字1800億円見込む 通期

ビジネス

伊GDP、第2四半期は前期比-0.1% 予想外のマ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い」国はどこ?
  • 3
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目にした「驚きの光景」にSNSでは爆笑と共感の嵐
  • 4
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 5
    M8.8の巨大地震、カムチャツカ沖で発生...1952年以来…
  • 6
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    タイ・カンボジア国境紛争の根本原因...そもそもの発…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「出生率が高い国」はどこ?
  • 10
    グランドキャニオンを焼いた山火事...待望の大雨のあ…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 8
    レタスの葉に「密集した無数の球体」が...「いつもの…
  • 9
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 10
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中