台湾人の88%が有事に備え...軍事侵攻だけでなく浸透工作・認知戦への危機感
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台湾の軍事演習で避難訓練に参加する市民(7月10日、台北のスーパー) DANIEL CENGーANADOLU/GETTY IMAGES
<筆者独自のアンケート調査で、台湾社会に広がる有事への危機感が浮き彫りに。防衛講座の受講や避難計画の確認など、生活レベルでの備えが急速に進む一方、台湾からは日本に対する警鐘も>
台湾有事の警戒感は社会でどの程度高まっているのか。その手掛かりを探すため、筆者は個人的にオンラインアンケートを実施した。2025年6月19〜26日の1週間に台湾市民から寄せられた回答は1560件。「中国との開戦危機が高まっていると感じるか」という質問に対し、88.9%が「以前より高まっている」と回答した。「以前と変わらない」と答えたのは8.6%だった。
また、万が一戦争が起きたときのために準備をしているとした回答者は88%で、主に避難場所の確認、物資の準備、防災知識や応急処置など訓練への参加を挙げる人が大半だった。中でも「黒熊学院」という台湾最大の民間防衛教育組織の授業を受けたという回答が突出して多かった。
台湾では、蔡英文(ツァイ・インウェン)前総統在任中の2022年、18〜36歳の男性に課される兵役義務を4カ月から1年間に延長することが定められ、2024年1月から適用が始まった。
「黒熊学院」は、兵役義務のある若い男性だけではなく、年齢やジェンダーも多様な全国民が防衛知識を持ち、防衛力を高めることが必要だと訴える専門家らによって2021年5月に設立された。
主に「戦争の認識」「情報と認知戦」「衛生と基礎救護」「避難準備計画」の4領域におけるリアルとオンライン講座を開催しており、3年間で10万人以上が受講した。受講者の年齢は2~88歳と幅広く、うち65%が女性で、特に子供や家族を連れて参加することも多いという。